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国立競技場サブトラックはなぜない?2026年最新の現状と東京世界陸上の舞台裏

如月 拓 如月 拓 • 更新: • 公開: • 読了約 17 分
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2026年10月現在、国立競技場には、メインスタジアムに隣接する常設サブトラックが設けられていません。東京2020オリンピックでは仮設の補助施設を使用しましたが、大会終了後に撤去。その後、2025年9月の東京2025世界陸上では、代々木公園陸上競技場や東京大学陸上競技場などを活用し、選手のウォーミングアップや練習に対応しました。

なぜ、国内最大級の競技場でありながら、選手が本番直前に調整するための専用施設が隣接していないのでしょうか。背景には、競技場周辺の土地利用、五輪後の施設運営方針、陸上競技の公認基準、そして国際大会を開催するための運営上の判断があります。2025年大会で課題となった選手輸送の実態も含め、2026年時点の状況を整理します。

【2026年最新】国立競技場にサブトラックは常設されているのか

国立競技場サブトラック

結論から言えば、2026年10月現在、国立競技場に隣接する常設サブトラックはありません。国立競技場そのものには400メートル・9レーンの全天候型陸上トラックが設けられていますが、これは本競技場のトラックであり、選手が競技前に調整するための独立した補助競技場とは別のものです。

日本スポーツ振興センター(JSC)が公表する施設概要でも、本競技場のトラックとスタジアムの設備が確認できます。一方、東京2025世界陸上財団の事業報告書は、代々木公園陸上競技場、東京大学陸上競技場、大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場などをウォームアップ会場・練習会場として運営したことを記録しています。大会ごとに外部施設を組み合わせる運用が採られたわけです。

ここで押さえておきたいのは、「国立競技場に陸上トラックがあること」と「大規模な陸上大会に必要な補助施設が隣接していること」は同義ではないという点です。メインスタジアムのトラックが立派でも、選手が本番前に独立して走り込みや調整を行える環境が自動的に整うわけではありません。

また、2026年の現状を調べる際には、代々木公園陸上競技場の利用状況にも注意が必要です。同施設は2026年7月1日から11月30日まで、第三種公認陸上競技場の公認更新工事に伴い利用停止となっています。東京都の公園公式案内によると、一般利用は12月から再開予定ですが、貸切利用の再開は2027年1月利用分からの予定です。国立競技場の常設サブトラックが新設されたという意味ではなく、既存施設側にも維持管理上の制約があることを示しています。

【なぜない?】東京五輪の仮設サブトラックが撤去された経緯

サブトラックが常設されていない背景を理解するには、国立競技場の大会後の利用方針を振り返る必要があります。施設の整備段階から、陸上競技の開催機能をどこまで残すのか、サッカーやラグビー、コンサートなどの利用とどう両立させるのかが議論されてきました。

2017年、政府は大会後の国立競技場を球技専用スタジアムに改修する方針を示しました。その理由の一つが、サブトラックを恒久的に確保する難しさです。スポーツ庁の検討会議では、周辺の聖徳記念絵画館前のグラウンドについて恒久利用が難しいことや、近隣に適切な土地が見当たらないことが課題として挙げられました。補助競技場を確保できなければ、大規模な陸上大会の開催にも支障が生じるという問題があったのです。

その後、陸上トラックの存続をめぐる方針は変化します。2019年にはトラックを残す方向で調整が進み、2022年には文部科学省が、世界陸上などの大規模大会では離れた場所にサブトラックを設置する方式も認められるようになってきたと説明しました。大会後の興行利用においても、コンサートの設営や仮設物の配置に陸上トラックが役立つという意見があり、トラックを残す判断につながりました。

つまり、メインスタジアムの陸上トラックは存続したものの、隣接する常設サブトラックまで整備することには至らなかった、というのが現在につながる経緯です。五輪時に仮設施設を設けたことと、その施設を大会後も恒久的に残すことは、当初から別の問題として扱われていました。

経緯を時系列で整理すると、次のようになります。

時期 主な出来事 サブトラックをめぐる意味
2017年 大会後の球技専用化方針が示される 陸上競技の継続利用と補助施設の確保が課題に
2019年 陸上トラックを存続させる方向へ見直し メインスタジアムの陸上機能が残る方向に進む
2021年 東京2020大会後、仮設サブトラックを恒久施設として残さない運用に 常設の補助競技場がない状態が続く
2022年 2025年世界陸上の東京開催が決定 離れた補助施設を活用する運営方式が検討される
2025年9月 東京2025世界陸上を開催 既存の陸上競技場などとシャトルバスを組み合わせて対応
2026年10月 国立競技場の常設サブトラックは未設置 周辺施設の利用条件や輸送計画が引き続き重要に

この問題は、単純に「なぜ仮設施設を撤去したのか」という話だけではありません。大会期間中だけ必要な施設を整備することと、長期的な土地利用や施設管理を考えて恒久施設を設けることでは、必要な予算も、関係者との調整も異なります。東京五輪後の国立競技場では、陸上競技のレガシーを残すことと、幅広いイベントを受け入れるスタジアムとして運営することの両立が課題になりました。

【2025年東京世界陸上】代々木公園と東大陸上競技場はどう使われた?

東京2025世界陸上は、2025年9月13日から21日までの9日間、国立競技場をメイン会場として開催されました。東京での開催は1991年大会以来で、国内では1991年東京、2007年大阪に続く3回目でした。大会には193の国・地域から1,992人の選手が参加し、入場者数は60万人を超えました。

この大会で国立競技場に隣接する常設サブトラックがなかったため、既存の陸上施設を組み合わせる方式が採用されました。中心となった施設が、代々木公園陸上競技場、通称「織田フィールド」です。東京の中心部に位置する既存の陸上競技場であり、選手がウォーミングアップを行う場所として活用されました。

もう一つの施設が東京大学陸上競技場です。大会報告書によると、東京大学陸上競技場では学生の利用期間をできるだけ確保できるよう、借用する場所を段階的に広げる方法が採られました。投光器や防球ネットなども設置し、練習環境の安全性と適切な利用に配慮しています。大学の既存施設を国際大会の運営に組み込むには、競技環境の整備だけでなく、通常の利用者との調整も必要だったことが分かります。

なお、施設の役割は少し丁寧に区別する必要があります。大会の開催基本計画では、代々木公園陸上競技場と東京体育館陸上競技場がウォームアップ会場、東京大学陸上競技場と大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場が練習会場として整理されています。一方、大会終了後の事業報告書では、代々木公園、東京大学、大井ふ頭の各競技場について、ウォームアップ会場および練習会場の運営実績がまとめられています。すべての施設が同一の役割を担ったと捉えるのではなく、公式計画上の区分と実際の運営を分けて理解が必要です。

織田フィールドでは、チームの待機場所としてフィールド内にテント66張と発電機を配置し、既存の避雷設備も交換しました。東京大学陸上競技場では、利用調整と設備の追加によって練習環境を整えています。つまり、既存施設を借りるだけで大会が成立したわけではありません。安全対策、選手の待機場所、照明や設備、一般利用者との調整まで含めた準備が必要でした。

この運営方式は、国立競技場の周辺に恒久的な補助競技場を新設しなくても国際大会を開催できることを示しました。ただし、既存施設を活用できることと、選手にとって最も望ましい環境を実現できることは別の評価軸です。

【シャトルバスで移動】東京2025世界陸上の選手輸送と運営の実態

サブトラック問題が注目された最大の理由は、選手がウォーミングアップ会場から国立競技場まで移動しなければならなかったことです。東京都議会の文教委員会では、代々木公園陸上競技場と国立競技場の距離は約3キロメートル、専用バスで約15分と説明されました。競技直前の移動には、時間管理だけでなく、選手の体調や普段の準備手順への影響という問題もあります。

大会運営側は、この距離を輸送計画で補う方法を採りました。2025年10月21日の東京2025世界陸上財団による大会総括の説明では、選手輸送の遅れが原因で競技開始が遅延した件数はゼロだったと報告されています。レースごとにバスを配車し、例えば100メートル予選では、7分間隔で組が行われる場合に各組につき1台を出すといった運用が行われました。バスには国内技術役員・審判員(NAR)が同乗し、位置情報や輸送状況を確認していたと報じられています。

ここで注意したいのは、「輸送による競技開始の遅延がゼロ」という実績が、「選手の不満もゼロだった」という意味ではないことです。大会後には、一部の選手やチーム関係者から、ウォーミングアップ会場が離れていることへの不満が伝えられました。報道では、女子800メートルで銅メダルを獲得した英国のキーリー・ホジキンソン選手が、従来のルーティンを変更する必要があったと語ったことも紹介されています。

この二つの評価は矛盾しません。主催者が競技日程を守れたことは、輸送計画の成果です。一方、選手が普段どおりのウォーミングアップを行い、身体を最適な状態に整えられたかどうかは、別に評価する必要があります。競技運営の成功と、アスリートにとっての使いやすさは、必ずしも同じ指標ではないのです。

国際大会では、競技の開始時刻が厳密に管理されます。選手をバスで輸送する方式では、出発時間、乗車確認、道路状況、会場到着後の動線など、多くの工程を連動させなければなりません。2025年大会は、そのような運営上の工夫によって全競技を予定どおりに進めた一方、選手の準備環境をどう改善するかという課題も浮き彫りにしました。

【設置基準と今後】国立競技場にサブトラックを常設するのは難しいのか

サブトラックの必要性を考えるうえでは、日本陸上競技連盟(日本陸連)の公認制度も重要です。公認陸上競技場には種別ごとの施設・設備要件があり、全国規模の大会や国際大会を開催するには、メイン競技場の走路だけでなく、競技の種類や規模に応じた付帯施設も問題になります。第1種公認陸上競技場の基本仕様や競技場に関する規程は、日本陸連が公開するルール・ハンドブックに整理されています。

ただし、「サブトラックがない競技場では、どのような場合も陸上競技の大会を開催できない」と理解するのは正確ではありません。日本陸連の規程には、オリンピックを開催した陸上競技場について、補助競技場を欠く場合でも第1種公認陸上競技場とすることができる特例があります。また、世界陸上のような国際大会では、開催地の事情に応じた施設配置について世界陸連との協議が行われます。公認制度上の要件と、特定大会の開催条件は区別して考える必要があります。

では、国立競技場に常設サブトラックを整備すれば問題は解決するのでしょうか。隣接施設があれば選手の移動負担を減らしやすくなる一方、用地の確保、整備費、維持管理費、周辺環境との調整が必要です。加えて、国立競技場は陸上競技だけでなく、球技やコンサートなど幅広いイベントに利用されます。限られた敷地の中で、競技施設としての機能と、多目的スタジアムとしての運営をどう両立するかが問われます。

日本スポーツ振興センターは、2025年4月から国立競技場の運営事業者が株式会社ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメントに変わったと案内しています。施設の所有者と運営事業者の役割を踏まえつつ、今後の整備については、競技団体、関係自治体、施設管理側などの調整が欠かせません。2026年10月時点で、国立競技場に隣接する常設サブトラックの新設が決定したとする公表情報は確認できません。

今後、国立競技場で大規模な陸上大会が計画される場合は、次の観点を確認すると、施設の課題と大会運営の現実を整理しやすくなります。

  • 施設面:常設の補助競技場があるのか、既存施設や仮設設備を活用するのか。
  • 選手の移動:ウォーミングアップ会場から本番会場までの距離、所要時間、輸送手段はどう設定されるのか。
  • 競技運営:輸送の遅延だけでなく、選手の待機場所、練習時間、体調管理にも配慮されているか。
  • 施設の継続性:大会終了後も利用できる設備なのか、一時的な整備として撤去されるのか。

これらを分けて見ることで、「サブトラックがあるか、ないか」だけでは把握しにくい大会運営の実態が見えてきます。

【国立競技場サブトラック】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:国立競技場にサブトラックはありますか?
A1:2026年10月現在、国立競技場に隣接する常設サブトラックはありません。本競技場には400メートル・9レーンの陸上トラックがありますが、独立した補助競技場とは別の施設です。

Q2:東京五輪で使われた仮設サブトラックはなぜ撤去されたのですか?
A2:東京2020大会に向けた仮設施設は、大会後も恒久的に残す施設として整備されたものではありませんでした。大会後の国立競技場の利用方針や、周辺用地を恒久的な補助競技場として確保する難しさなどが背景にあります。

Q3:2025年東京世界陸上ではどこがサブトラックの代わりになりましたか?
A3:代々木公園陸上競技場や東京大学陸上競技場など、既存の陸上施設が活用されました。公式の開催基本計画では、代々木公園陸上競技場と東京体育館陸上競技場がウォームアップ会場、東京大学陸上競技場と大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場が練習会場として整理されています。

Q4:サブトラックが離れていても、世界陸上は開催できますか?
A4:大会の施設条件や世界陸連との協議などを踏まえ、離れた場所の補助施設を利用する方式が認められる場合があります。東京2025世界陸上では、専用バスによる輸送などを組み合わせて開催されました。ただし、すべての大会で同じ方式が認められるとは限りません。

Q5:2026年現在、織田フィールドは利用できますか?
A5:東京都の公園公式案内によると、代々木公園陸上競技場は2026年7月1日から11月30日まで公認更新工事のため利用停止中です。一般利用は12月から、貸切利用は2027年1月利用分から再開する予定とされています。利用を考えている場合は、最新の施設案内を確認する必要があります。

国立競技場に常設サブトラックがない理由は、単に施設整備が遅れているからではありません。東京五輪後の利用方針、周辺用地の制約、多目的スタジアムとしての運営、陸上競技の公認制度と国際大会の開催条件が複雑に関係しています。

2025年東京世界陸上では、代々木公園陸上競技場や東京大学陸上競技場などを活用し、専用バスによる選手輸送によって競技日程を守りました。一方で、一部選手からは会場間の移動に伴う準備環境への不満も示されました。大会を予定どおりに運営できたことと、選手が最良の条件で競技に臨めたかどうかは、分けて評価すべき課題です。

2026年10月現在、国立競技場に隣接する常設サブトラックの新設が決まったという公表情報は確認できません。今後の大規模大会を考える際には、施設の有無だけでなく、ウォーミングアップ会場の配置、選手輸送の確実性、練習環境の質、そして大会後も活用できる施設整備かどうかを総合的に見る必要があります。国立競技場の陸上トラックをレガシーとして残すことと、その機能を最大限に生かせる競技環境を整えること。その両立が、今後の施設運営と大会招致における大きな論点です。

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如月 拓

家計・住まい・制度の話題を担当。公的機関の公表資料と専門家の見解を照合し、推測と事実を分けて書きます。

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