米津玄師とサッカーの関係を知るうえで、欠かせないのが2026年のNHKサッカーテーマに選ばれた新曲「烏(からす)」だ。2026年4月28日に発表され、6月15日に配信リリースされた本作は、FIFAワールドカップ2026のNHK中継でも使用された。楽曲の初公開は5月10日放送の「サンデースポーツ」。加えて、6月21日にはミュージックビデオ(MV)も公開されている。
注目したいのは、サッカー好きとして知られる米津玄師が、単純な勝利や団結を歌うのではなく、競争の中で生きる一人ひとりの人間に目を向けたことだ。本人のインタビューや公式発表をたどると、なぜタイトルが「烏」なのか、歌詞にどんな思いが込められているのか、そしてW杯のテーマ曲として何を伝えようとしているのかが見えてくる。2026年10月28日時点の情報をもとに、発表経緯から配信実績、MVの見どころまで整理する。
【米津玄師とサッカーの関係】好きになった理由とテーマ曲を担当した経緯

米津玄師がサッカーを好きになったのは、幼少期から競技を続けていたからではない。Billboard JAPANのインタビューで、本人は小学校1年生ごろに短期間だけサッカーを経験したものの、集団で何かをすることが自分の性に合わず、1年に満たないうちにやめたと振り返っている。
その後、約10年前に改めてサッカーに興味を持ち、観戦を趣味として楽しむようになった。米津にとってサッカーは、音楽制作や自身の活動に直接結びつける必要のない、純粋に好きなものだったという。
本人が魅力として挙げたのは、選手たちが全身全霊でピッチを駆け回り、ゴールが決まった瞬間にスタジアム全体が高揚する光景だ。音楽活動にもライブという熱狂の場はあるが、サッカーにはまた異なる種類の興奮がある。その、自分の仕事とは少し離れた世界だからこそ、より美しく見えるという感覚が、サッカーへの愛着につながった。
楽曲制作の依頼を受けた背景にも、この長年の関心がある。2026年のNHKサッカーテーマを担当することについて、米津は以前からサッカー関連のテーマソングをテレビで見聞きしており、自分が担うならどのような曲になるのか興味があったと語っている。
加えて、2026年の年始ごろにはイングランドでマンチェスター・シティとリバプールの重要な試合を観戦。リバプールで試合前に歌われる「You'll Never Walk Alone」を通じ、音楽がクラブの歴史や人々の感情を一つにつなぐ力を改めて実感したという。サッカーと音楽が交わる場所を実際に見た経験も、「烏」の制作を考えるうえで興味深い背景だ。
米津玄師のサッカー愛は、単に競技に詳しいという話にとどまらない。試合を観戦する側として感じてきた熱狂と、表現者として人の感情を動かす音楽。その二つが重なったことで、今回のテーマ曲は本人にとっても特別な挑戦になった。
【2026年最新年表】「烏」の発表から配信・W杯中継まで
「烏」は、発表から配信、映像公開まで段階的に情報が解禁された。米津玄師の公式サイト「REISSUE RECORDS」や音楽メディアの発表を整理すると、楽曲がどのようにW杯の中継へ結びついていったのかが分かる。
| 日付 | 出来事 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 2026年4月28日 | テーマ曲決定を発表 | 「2026 NHKサッカーテーマ」として「烏」を書き下ろしたことを公表。 |
| 2026年5月10日 | 初公開 | NHK総合「サンデースポーツ」で楽曲を初公開。同日からNHKのサッカー関連番組でも使用。 |
| 2026年5月15日 | 配信日を発表 | 6月15日のデジタル配信リリースを告知。Lyric Visualのショート版も公開。 |
| 2026年6月15日 | 配信開始・W杯中継で使用 | 各配信サイトでリリース。同日の日本代表初戦・オランダ戦のNHK中継内でもオンエア。 |
| 2026年6月17日 | 初日の反響を発表 | 各配信サイトのデイリー・リアルタイムランキングで合計50冠を達成したと報じられる。 |
| 2026年6月19日 | 遠藤航との対談番組を見送り | 放送予定だった特別対談は、遠藤航の代表離脱を受けて放送見送りに。 |
| 2026年6月21日 | MV公開 | 山田智和監督によるミュージックビデオを公開。 |
| 2026年6月26日 | 週間チャートで首位6冠 | Billboard JAPANやオリコンなどの主要週間チャートで首位を獲得したと発表。 |
特に重要なのは、配信日がW杯の日本代表初戦と重なった点だ。2026年6月15日、日本代表はオランダとの初戦を迎え、NHKの中継内でも「烏」が流れた。楽曲の配信開始と大会の大きな節目が同じ日に重なったことで、音源として聴く体験と、試合を見ながら聴く体験が結びついた。
なお、5月10日の「サンデースポーツ」で公開されたのは、楽曲の初公開映像だ。5月15日に発表された配信日、6月15日の音源リリース、6月21日のMV公開はそれぞれ別の出来事である。この3つを混同しないことが、検索で情報を整理する際のポイントになる。
また、「烏」はFIFAが世界共通の公式アンセムとして選定した楽曲ではなく、あくまでNHKのサッカーテーマだ。FIFAワールドカップ2026のNHK中継や関連番組で使用されるテーマ曲として位置づけられている。
【烏の読み方と歌詞の意味】タイトルに込められた二つの視点
曲名「烏」の読み方は「からす」。一般的な「鳥」とは異なる漢字が使われている点も、楽曲を理解する手がかりになる。
サッカーとの関係で最初に連想されるのは、日本サッカー協会のシンボルとして知られる三本足の烏、八咫烏(やたがらす)だろう。日本代表のエンブレムにも烏のモチーフがあり、タイトルには代表チームとのつながりを感じさせる要素がある。
しかし、Billboard JAPANのインタビューで米津が明かしたのは、それだけではない。本人にとってカラスは個人的にも親しみのある存在だ。かつて自宅の屋上にいたカラスとコミュニケーションを取ろうとし、部屋の窓を叩かれるような経験もあったという。身近な友人のような存在としてカラスを捉えてきたことが、タイトルの背景にある。
つまり「烏」は、日本代表を象徴するモチーフであると同時に、誰かに与えられた役割を背負う前の、自由で個人的な存在のイメージも持っている。国を代表する選手たちと、日常の中で自分の世界を生きる一人ひとり。その二つの視点が、タイトルの中で重なっている。
歌詞の意味を考える際にも、この二重性が重要だ。描かれているのは、子どものころに抱いた理想、成長するにつれて増えていく秘密や不安、時間の経過によって変わっていく人間関係など、人生の中で誰もが経験し得る感情である。
勝利を目指す選手に重ねて聴けば、幼いころに抱いた夢と、プロとして結果を求められる現在との距離が浮かび上がる。一方で、サッカーを知らない人にとっても、夢を追う過程での挫折や、昔の自分を振り返る感覚に重ねられる。歌詞を特定の選手や実在の人物の物語に限定せず、広い意味での人生の歌として読むことができる。
もう一つの要点は、周囲の期待から少し距離を取るという発想だ。チームの勝利を願う応援や寄せ書きは、善意から生まれるものだが、受け取る側にとっては重圧にもなり得る。応援を否定するのではなく、期待をいったん脇に置いて、自分が何を望んでいたのかを見つめ直す。その余白が、楽曲のメッセージを支えている。
歌詞の意味を「日本代表に勝利をもたらす応援歌」とだけ解釈すると、作品の一面しか見えない。むしろ「勝つこと」と「個人として自分らしく生きること」を両立させようとする視点に注目すると、「烏」が持つ独自性が理解しやすくなる。
【本人コメントから読み解く制作背景】なぜ単純な勝利の歌にしなかったのか
米津玄師は公式発表で、「烏」について、サッカーという大きな構造の中で前を見据えて立ち続ける人々が、集団であると同時に「健やかなる個人」でもあってほしいという願いを込めたと説明している。
この言葉は、楽曲の制作意図を端的に表している。サッカーはチームスポーツであり、国やクラブの代表として戦う以上、勝敗が避けられない。しかし、集団が掲げる目標と、そこに所属する一人ひとりの内面は、必ずしも同じものではない。
Billboard JAPANのインタビューでは、米津は国際的な大会だからこそ、団結や献身、敵に打ち勝つことだけを素直にテーマに据えるのは難しかったと説明している。勝利の重要性を否定するのではなく、勝敗という仕組みの中にいる選手たちを、それぞれ独立した個人として肯定する方法を考えたという。
この考え方は、従来のスポーツソングのイメージとも対照的だ。スタジアムで大合唱される力強いアンセムは、観客と選手の一体感を生み、試合前の高揚感を強める。一方、「烏」は、競争の熱気をそのまま増幅するのではなく、そこに少しの距離や余白をつくろうとしている。
米津が同じインタビューで語ったのは、歌詞の多くが本人の実体験や、身近な範囲で見聞きしてきた出来事に根ざしているということだ。大人になるにつれて複雑な経験を重ねても、子どものころの自分が消えるわけではない。過去を振り返ることは、単なる懐古ではなく、これまでとは違う景色を見つける行為でもある。
この制作背景を踏まえると、「烏」は選手を奮い立たせるためだけの曲ではないことが分かる。代表という大きな看板を背負う選手にも、迷い、傷つき、昔の夢を抱えた一人の人間としての時間がある。そこに目を向けることで、勝敗の向こう側にある人生まで表現しようとした作品なのだ。
【米津玄師「烏」のMVの見どころ】造船所の映像が映し出すもの
「烏」のミュージックビデオは、2026年6月21日に公開された。監督を務めたのは山田智和。映像の舞台となるのは、巨大な船を生み出す造船所だ。
USENの音楽情報サイト「encore」の紹介によると、このMVでは、物体の断面を通して、表からは見えない時間の蓄積を可視化するという発想が採用されている。船は突然完成するのではなく、見えない場所で無数の工程が積み重なって初めて形になる。その過程を、人間が生きてきた時間や努力と重ねている。
このモチーフは、歌詞に描かれる人生の振り返りとも響き合う。人が目にするのは、完成した船や試合に出場する選手の姿だ。しかし、その形に至るまでには、表面からは見えない時間、失敗、修正、積み重ねが存在する。
サッカーに置き換えれば、試合で活躍する選手の姿だけでなく、そこに至るまでの練習や葛藤、選手自身が抱える記憶もまた、その人を形づくる重要な要素だ。結果だけを見て評価するのではなく、その内側にある過程にも目を向ける。MVの造船所は、楽曲のテーマを視覚的に伝える舞台として機能している。
また、音楽面では、ストリングスやフルートなどの生楽器を生かした爽やかなサウンドも特徴として紹介されている。激しいギターや力強い合唱で勝利への高揚感を押し出すのではなく、風通しのよい音像を通じて、歌詞にある個人の内面や記憶を浮かび上がらせる構成だ。
MVを見るときは、造船所の映像を単なる壮大な背景として捉えるのではなく、「完成した姿の裏側に何があるのか」という視点で追うと、歌詞とのつながりが見えやすい。勝敗や結果だけでは分からない、人が積み重ねてきた時間。その存在を静かに描く映像作品になっている。
なお、MV公開前の5月15日にはLyric Visualのショート版も公開されている。歌詞と音楽を中心に楽しむ映像と、造船所を舞台に物語性を持たせたMVは、それぞれ異なる角度から「烏」の世界観を伝えている。
【W杯中継での起用と評判・反響】50冠の実績と遠藤航との対談の行方
「烏」は2026年6月15日の配信開始直後から大きな反響を呼んだ。6月17日付の音楽関連報道では、各配信サイトのデイリー・リアルタイムランキングで合計50冠を達成したと発表されている。加えて、オリコンの6月15日付デイリーデジタルシングルランキングでは、約1万2,000ダウンロードを記録して1位となった。
週間チャートでも存在感を示した。6月26日付の音楽メディア「encore」の発表によると、Billboard JAPANの総合ソング・チャート「JAPAN Hot 100」では、6月24日公開分で9,564ポイントを獲得して首位を記録。ダウンロードやストリーミングなど複数の指標でも上位に入り、主要週間チャートで6冠を達成したと報じられた。
こうした数字は、作品が音楽ファンだけでなく、W杯をきっかけに米津玄師の新曲を知った人々にも届いたことを示す材料になる。ただし、ランキングの首位獲得は配信実績を示すものであり、すべての視聴者が歌詞の解釈に同意していることを意味するわけではない。楽曲への評価を考える際は、チャート実績と作品そのものへの感想を分けて見る必要がある。
また、W杯を通じた話題では、サッカー日本代表の遠藤航との特別対談も注目された。米津玄師と遠藤が出演する「米津玄師×遠藤航 NHKサッカーテーマ SPECIAL対談」は、2026年6月19日にNHK総合で放送予定だった。米津が「烏」に込めた思いを語り、遠藤が大会への決意を語る内容として告知されていた。
しかし、遠藤は大会前にけがのため日本代表を離脱。NHKは6月13日、対談の内容が大会への出場を前提としていることから、番組の放送を見送ると発表した。したがって、当初告知されていた6月19日の対談番組は予定どおり放送されたわけではない。対談が放送されたとする情報を見かけた場合は、この経緯を確認したい。
一方、楽曲そのものはNHKのサッカー中継や関連番組で使用され、配信開始日には日本代表のオランダ戦中継でもオンエアされた。遠藤との対談番組は見送りとなったものの、「烏」がW杯を彩るNHKサッカーテーマとして起用された事実に変わりはない。
2026年10月28日時点で押さえておきたいのは、作品の評価を単に「盛り上がる応援歌かどうか」で判断しないことだ。ランキング実績は大きな反響を示す一方、歌詞や映像の魅力は、勝利への期待と個人の人生をどう結びつけているかという点にもある。
【米津玄師サッカー】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:米津玄師の「烏」は何と読みますか?
A1:「からす」と読みます。2026年NHKサッカーテーマとして書き下ろされた楽曲で、日本代表のエンブレムに関係する烏のイメージと、米津本人が個人的に親しみを感じてきたカラスのイメージが重なっています。
Q2:「烏」の配信日はいつですか?
A2:2026年6月15日です。同日にはFIFAワールドカップ2026の日本代表初戦・オランダ戦が行われ、NHK中継内でも楽曲が使用されました。初公開は5月10日のNHK総合「サンデースポーツ」、MV公開は6月21日です。
Q3:「烏」の歌詞にはどんな意味が込められていますか?
A3:米津玄師本人のコメントやインタビューからは、勝敗や集団の目標だけではなく、その中にいる一人ひとりの生き方を肯定する意図が読み取れます。子どものころの夢、成長に伴う不安、過去を振り返ることなどが描かれ、サッカーに限らず、何かに挑戦する人にも重ねられる内容です。
米津玄師とサッカーの関係は、長年の観戦趣味から始まり、2026年のNHKサッカーテーマ「烏」という形で結実した。楽曲は4月28日に発表され、5月10日の「サンデースポーツ」で初公開。6月15日に配信され、W杯のNHK中継でも使用されるとともに、配信ランキングや週間チャートでも大きな実績を残した。
「烏」の読み方は「からす」。タイトルには日本代表のシンボルを想起させる意味だけでなく、米津自身がカラスに感じてきた親しみも込められている。歌詞やMVを通じて描かれるのは、勝利を目指す集団の中にいる人々が、それぞれの記憶や思いを持つ個人でもあるという視点だ。
作品を深く味わいたいなら、まず本人のコメントを読み、次に歌詞のテーマを捉え、最後に造船所を舞台にしたMVの映像表現を追ってみるとよい。単なる勝利の応援歌として聴く場合とは異なる発見があるはずだ。
2026年のW杯をきっかけに「烏」を知った人も、以前から米津玄師の音楽を聴いてきた人も、勝敗の向こう側にいる一人ひとりの人間に目を向けることで、この曲の魅力をより深く感じられるだろう。