ラグビー日本代表に韓国人選手はいるのか。答えは「いる」です。韓国籍の在日コリアンとして知られる李承信(リ・スンシン)、韓国・ソウル生まれで日本国籍を取得した具智元(グ・ジウォン)など、韓国とのつながりを持つ選手が日本代表の歴史を築いてきました。さらに2026年10月には、朝鮮大学校の李智寿(リ・チス)が日本代表初キャップを獲得し、欧州遠征メンバーにも選出されています。
ただし、「韓国籍」「韓国生まれ」「韓国にルーツがある」「現在の日本代表メンバーである」は、それぞれ意味が異なります。ラグビーでは国籍だけで代表資格が決まるわけではなく、出生地や家族の出生地、登録歴、居住歴などが判断材料になります。李承信の大阪朝鮮高級学校からの歩み、具智元の国籍取得、そして2026年の最新動向を整理すると、日本代表をめぐる疑問が見えてきます。
【結論】ラグビー日本代表に韓国人選手はいる?国籍とルーツを整理

日本代表には、韓国籍の在日コリアンとして紹介されてきた李承信や、韓国で生まれた具智元など、異なる経歴を持つ選手がいます。ただし、両者の国籍や代表入りの経緯は同じではありません。
李承信は2001年1月13日、兵庫県で生まれたスタンドオフ(SO)です。2023年のスポーツ報道では韓国籍の在日3世として紹介され、大阪朝鮮高級学校の卒業生として初めて15人制日本代表のキャップを獲得した選手として注目されました。日本生まれであることは、代表資格を考えるうえで要点です。
一方、具智元は1994年7月20日、韓国・ソウル生まれ。父の具東春さんは元韓国代表のプロップで、具智元自身も韓国ラグビーと深いつながりを持っています。日本で競技を続け、2017年に日本代表デビューを果たした後、2019年に日本国籍を取得しました。
そして2026年の新しい動きとして、李智寿が挙げられます。兵庫県出身で、東大阪朝鮮中級学校、大阪朝鮮高級学校、朝鮮大学校という経歴を持つセンター(CTB)です。2026年10月24日のフィジー代表戦で日本代表初キャップを獲得し、同月26日に発表された欧州遠征メンバーにも選出されました。なお、日本ラグビーフットボール協会の選手プロフィールには国籍が明記されていないため、教育歴と法的な国籍は分けて理解する必要があります。
【李承信のプロフィール】大阪朝鮮高級学校から日本代表入りした経歴
李承信の歩みを理解するには、代表デビューだけでなく、幼少期からの競技歴と大阪朝鮮高級学校での経験を押さえる必要があります。
日本ラグビーフットボール協会と所属クラブのプロフィールによると、李は4歳から兵庫県ラグビースクールでラグビーを始めました。神戸朝鮮初中級学校を経て大阪朝鮮高級学校へ進学し、高校2年時には高校日本代表に選出。高校3年時には主将として全国高校ラグビー大会、通称「花園」への出場を経験しています。
その後、帝京大学に進学しましたが中退。海外でプレーする目標を持っていたものの、新型コロナウイルスの影響で渡航が難しくなり、2020年に神戸製鋼コベルコスティーラーズへ加入しました。現在の所属はコベルコ神戸スティーラーズです。
代表入りの大きな転機となったのは2022年です。6月25日のウルグアイ代表戦で日本代表デビューを果たし、同年夏にはフランス代表との試合にも先発。キックの精度、相手の守備を崩すラン、パスを組み合わせる攻撃力が評価され、若い司令塔として注目を集めました。
2023年のラグビーワールドカップ・フランス大会では日本代表メンバーに選出され、9月28日のサモア戦で途中出場。出場時間は4分でした。大会メンバーに選ばれたことと、試合で長時間プレーしたことは別ですが、世界最高峰の舞台を経験した事実は変わりません。
李承信の代表入りは、朝鮮学校出身者の可能性を広げた点でも意味があります。本人の歩みを報じたスポーツメディアでは、在日コリアンの子どもたちに希望を与える存在としての側面も紹介されてきました。出自だけで評価されたのではなく、長年の競技経験と、SOとして試合を組み立てる技術を積み重ねて代表の座をつかんだ選手です。
【具智元と歴代選手】韓国ルーツを持つ日本代表の歩み
韓国にルーツを持つ選手の日本代表入りは、李承信から始まったわけではありません。過去には、韓国から日本に留学した金哲元(キム・チョルウォン)や、在日コリアンの選手として知られる金正奎(キン・ショウケイ)も代表でプレーしています。
ラグビー専門メディアのラグビーリパブリックによると、金哲元は2007年のラグビーワールドカップ・フランス大会に日本代表として出場しました。また、金正奎は2016年5月のアジアラグビーチャンピオンシップで日本代表デビューを果たしています。それぞれ背景や国籍取得の経緯は異なりますが、李承信以前から多様なルーツを持つ選手が日本代表を支えてきたことが分かります。
具智元も、その歴史を語るうえで欠かせない選手です。韓国で生まれ、ニュージーランドでの生活を経て日本にラグビー留学。日本文理大学附属高校、拓殖大学を経てHonda HEATに加入しました。2017年に代表デビューし、右プロップとしてスクラムの最前列を支える役割を担ってきました。
2019年のワールドカップ日本大会では全5試合に出場し、日本代表のベスト8進出に貢献。大会後の2019年12月に日本国籍を取得し、2023年のワールドカップにも出場しました。つまり、具智元は代表デビュー時と国籍取得後で状況が異なる選手です。日本代表としてプレーするために、最初から日本国籍が必要だったわけではありません。
この違いは重要です。李承信は日本生まれの韓国籍選手として報道され、具智元は韓国生まれで後に日本国籍を取得しました。両者を単に「韓国人選手」と一括りにすると、個人の歩みや国籍の変化、代表資格の仕組みを正しく理解できなくなります。
【歴代・経歴比較表】李承信、具智元、李智寿は何が違う?
代表入りした時期や国籍、教育歴を並べると、韓国とのつながりを持つ選手たちが、それぞれ異なる経路で日本代表に到達していることが分かります。
| 時期 | 選手・出来事 | 経歴と確認できるポイント |
|---|---|---|
| 2007年 | 金哲元 | 韓国から日本に留学した選手。ラグビーワールドカップ2007年大会に日本代表として出場。 |
| 2016年 | 金正奎 | 在日コリアンの選手として知られ、2016年5月に日本代表デビュー。 |
| 2017年 | 具智元 | 韓国・ソウル生まれ。日本代表デビューを果たし、右プロップとして活躍。 |
| 2019年 | 具智元 | ワールドカップ日本大会で全5試合に出場。同年12月に日本国籍を取得。 |
| 2022年 | 李承信 | 兵庫県生まれ。6月25日のウルグアイ戦で日本代表デビュー。朝鮮学校出身者として初の代表キャップ獲得。 |
| 2023年 | 李承信・具智元 | 両選手がラグビーワールドカップ・フランス大会の日本代表メンバーとして出場。 |
| 2026年10月24日 | 李智寿 | 朝鮮大学校在学中にフィジー戦で日本代表初キャップを獲得。 |
| 2026年10月26日 | 李智寿 | 日本ラグビーフットボール協会が発表した欧州遠征メンバー35人に選出。 |
この表から読み取れるのは、韓国にルーツを持つ選手の代表入りが、一つの時代や一つの国籍の形に限定されていないことです。日本生まれの選手、韓国生まれで日本国籍を取得した選手、朝鮮学校から大学まで進んで代表に到達した選手が、それぞれの道を歩んでいます。
また、李智寿の代表入りは2026年の新しい動きです。関東大学リーグ戦2部に所属する朝鮮大学校で主将を務め、U23日本代表やJAPAN XVなどの活動を経験してきた選手が、テストマッチの舞台に進みました。代表入りを判断する際には、出自だけでなく、所属チームでの実績、年代別代表での経験、実際の試合で示した能力も見る必要があります。
【代表資格の仕組み】なぜ韓国籍でも日本代表になれるのか
日本代表に韓国籍の選手が入れる理由は、15人制ラグビーの代表資格が、一般的な国籍の考え方とは異なる基準で決められているためです。国際統括団体ワールドラグビーの規定第8条は、選手と代表する国・地域の協会との間に、実質的で確かなつながりがあることを求めています。
現行規定では、原則として次のいずれかの条件が代表資格の根拠になります。
- 本人がその国・地域で生まれている。
- 父母または祖父母のうち1人が、その国・地域で生まれている。
- 代表としてプレーする直前の60か月間、その国のラグビー協会またはラグビー団体に継続して登録されている。
- 生涯の累積で10年間、その国に居住している。
60か月の登録要件は、2024年8月1日から適用された改正によるものです。それ以前の制度では、一定期間の継続居住が基準となっていました。現在は、対象期間中にラグビー協会やクラブなどへの登録が継続していることが重要になります。居住歴を利用する累積10年の条件も別に設けられています。
李承信の場合、兵庫県生まれであるため、出生地の条件が代表資格を考えるうえで直接関係します。韓国籍であっても、日本で生まれたことを根拠に日本代表の資格を得られる仕組みです。日本国籍を取得したかどうかと、15人制日本代表としてプレーできるかどうかは、同じ問題ではありません。
具智元の場合は事情が異なります。韓国・ソウル生まれですが、日本で長くラグビーを続け、2017年に日本代表デビューしました。当時は居住期間に関する旧制度の条件を満たして代表資格を得ており、その後の2019年に日本国籍を取得しています。
なお、すでに別の国・地域の代表として出場した選手には、原則として他の代表に移れないという制限もあります。例外的な移籍規定はありますが、単に国籍を変更すれば自由に代表を変えられるわけではありません。また、オリンピックの7人制ラグビーには国籍に関する別の要件も関わります。15人制の代表資格と混同しないことが大切です。
【2026年最新】李承信・具智元・李智寿の代表活動はどうなっている?
2026年10月28日時点で注目したいのは、李承信と李智寿の代表活動が異なる状況にあることです。
日本ラグビーフットボール協会が10月26日に発表した「リポビタンDツアー2026」の欧州遠征メンバーは35人です。その中に李智寿が選ばれています。李は10月24日のフィジー戦で途中出場し、初キャップを獲得しました。協会の公式メンバー情報でも、朝鮮大学校所属のバックスとして掲載されています。
一方、李承信は同遠征の35人には含まれていません。協会の発表では、コンディションの都合で今回の選考対象外となった選手の一人として名前が挙げられています。これは今回の遠征に関する選考状況を示すものであり、代表資格を失ったという意味ではありません。
日本代表の歴代キャップ一覧では、李承信は2026年8月6日時点で29キャップを記録しています。具智元も同日時点で29キャップです。ただし、代表キャップの累計は過去の代表出場実績であり、現在の遠征メンバーに選ばれているかどうかを示す数字ではありません。
李智寿については、2026年10月24日のフィジー戦で代表デビューしたこと、10月26日発表の欧州遠征メンバーに入ったことが最新の確認できる動きです。今後の出場機会やワールドカップのメンバー入りは、遠征中の起用、コンディション、代表スタッフの選考などによって決まります。
「韓国人選手は現在も日本代表にいるのか」と調べる場合は、過去の代表経験と直近の登録メンバーを分けて見ることが重要です。また、選手の国籍については、公式プロフィールに記載がない場合、名前や学校名だけから断定することはできません。
【プロの結論】韓国籍・韓国ルーツの選手を理解する3つの判断基準
ラグビー日本代表と韓国とのつながりを正しく理解するには、次の3点を分けて確認するのが有効です。
1.法的な国籍と民族的・文化的なルーツを区別する。 李承信は韓国籍の在日コリアンとして報道されてきました。具智元は韓国生まれで、後に日本国籍を取得しています。李智寿は朝鮮学校・朝鮮大学校を経た選手ですが、教育歴と法的国籍は別の情報です。
2.代表資格はワールドラグビーの規定で確認する。 15人制の日本代表資格は、日本国籍の有無だけで判断されません。出生地、父母・祖父母の出生地、ラグビー登録歴、累積居住歴など、規定第8条に定められた条件が根拠になります。
3.過去の実績と2026年の最新状況を混同しない。 李承信と具智元にはワールドカップ出場歴があり、李智寿は2026年に初キャップを獲得しました。しかし、過去の大会出場、代表キャップ数、直近の遠征メンバー選出は、それぞれ異なる情報です。日本ラグビーフットボール協会の公式発表と、試合ごとの登録メンバーを照らし合わせることで、現在の状況を把握できます。
韓国とのつながりを持つ選手の活躍は、日本代表の歴史をより多面的に理解する手がかりになります。出身や国籍だけで選手を分類するのではなく、どこで育ち、どのように競技を続け、どの条件で代表資格を得て、試合で何を示してきたのか。その一つひとつを追うことが、選手の実像を理解する近道です。
【ラグビー日本代表韓国人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:韓国籍のままラグビー日本代表になれるのですか?
A1:はい。15人制ラグビーでは、日本国籍を取得していなくても、ワールドラグビーの規定第8条に定められた出生地や家族の出生地、登録歴、居住歴などの条件を満たせば代表資格を得られます。李承信は、韓国籍の在日コリアンとして報道され、日本生まれの選手として代表入りしました。
Q2:李承信はワールドカップに出場していますか?
A2:はい。2023年のラグビーワールドカップ・フランス大会に日本代表として出場しています。9月28日のサモア戦で途中出場し、出場時間は4分でした。大会メンバーに選ばれ、実際に試合に出場した選手です。
Q3:2026年現在、韓国ルーツを持つ選手は日本代表にいますか?
A3:2026年10月24日のフィジー戦で李智寿が日本代表初キャップを獲得し、10月26日発表の欧州遠征メンバーにも選ばれています。李承信は今回の遠征メンバーには含まれていませんが、代表資格を失ったという発表ではなく、コンディションの都合で今回の選考対象外とされています。なお、李智寿の法的国籍は日本ラグビーフットボール協会の公式プロフィールには明記されていません。
ラグビー日本代表には、韓国籍の在日コリアンとして知られる李承信、韓国生まれで日本国籍を取得した具智元など、韓国とのつながりを持つ選手がいます。そして2026年には、朝鮮大学校の李智寿が日本代表初キャップを獲得し、欧州遠征メンバーに選ばれました。
3人の経歴は同じではありません。李承信は大阪朝鮮高級学校から代表入りし、2023年ワールドカップを経験。具智元は韓国・ソウル生まれで、日本での競技生活を経て代表入りし、2019年に日本国籍を取得しました。李智寿は大学在学中に代表デビューを果たし、新しい世代の選手として歩み始めています。
代表資格を理解するうえで最も大切なのは、国籍、ルーツ、代表資格、現在の選考状況を混同しないことです。ワールドラグビーの規定、協会の公式プロフィール、最新の代表メンバー発表を基準に確認すれば、「韓国人だから日本代表になれない」「日本代表に入るには必ず帰化しなければならない」といった誤解は解消できます。
これからの日本代表を見る際には、選手が持つ背景だけでなく、ポジションごとの役割、試合でのパフォーマンス、代表キャップや大会出場歴にも注目してみてください。多様な経歴を持つ選手たちが、桜のジャージーを着てどのような結果を残していくのか。それが、ラグビー日本代表の歴史を読み解くうえでの大きな見どころです。