パラアイスホッケー日本代表は、専用のそり「スレッジ」と2本のスティックを駆使し、氷上で世界の強豪に挑む日本の代表チームです。2026年のミラノ・コルティナ冬季パラリンピックでは8位となり、国際大会で戦うための課題と、次世代の選手育成という新たなテーマが浮き彫りになりました。
競技のルーツは北欧にあり、1994年のリレハンメルパラリンピックから冬季パラリンピックの正式競技として実施されています。かつて「アイススレッジホッケー」と呼ばれた競技が、なぜ名称を変更したのか。日本代表のメンバーや試合結果、歴代成績、そして競技の仕組みを、日本パラアイスホッケー協会や日本パラリンピック委員会の公式情報をもとに整理します。
【2026年最新】パラアイスホッケー日本代表の現在地と今後の目標

2026年10月現在、日本代表を理解するうえで押さえておきたいのは、ミラノ・コルティナ2026パラリンピックの結果と、その後に始まった新シーズンの強化活動です。
日本パラアイスホッケー協会の大会記録によると、2026年大会は3月6日から15日までイタリアで開催され、日本は最終順位8位となりました。大会にはアメリカ、カナダ、中国、チェコ、ドイツ、スロバキア、イタリア、日本の8か国が参加しています。
日本代表は予選でチェコ、カナダ、スロバキアと対戦し、順位決定ラウンドではイタリアと再びスロバキアに挑みました。惜しい試合があった一方、上位国との得点力や試合運びには明確な差が残りました。
大会後の2026年3月24日、日本パラアイスホッケー協会は総括を公表し、課題として試合展開のスピード、フィジカルコンタクトへの対応力、得点力を挙げています。同時に、若手選手の台頭やチーム全体の粘り強さを次につながる成果として評価しました。
2026年4月25日には、2026-2027シーズンの新体制も発表されています。ハイパフォーマンスディレクターは須藤悟氏、監督はブラッドリー・バウデン氏が務め、コーチには熊谷豪士氏と間嶋貴大氏が就任しました。
次の大きな目標は、2027年春に予定されている世界選手権Aプールでの残留です。協会は新シーズンの重点としてフィジカル面の底上げを掲げ、強化合宿や選手発掘・育成を進めています。2026年の結果を単独で評価するだけでなく、世界選手権に向けたチーム再建の過程まで追うことが、現在の日本代表を理解するポイントです。
【ルールと競技の仕組み】スレッジと2本のスティックが生む独特のスピード
パラアイスホッケーは、下肢に障がいのある選手が専用のそりに乗ってプレーする、対戦型のチームスポーツです。通常のアイスホッケーと同じリンク、ゴール、パックを使用しますが、移動とパック操作を両立するために独特の用具が採用されています。
スレッジは単なる移動用具ではないスレッジは、選手が座るシート部分と頑丈なフレーム、氷上を滑る2枚のブレードで構成された競技用のそりです。選手の身体に合わせて座面や固定具を調整し、安定性と操作性を確保します。
通常のアイスホッケーではスケートで氷を蹴って前進しますが、パラアイスホッケーでは左右の手に持ったスティックのグリップエンドにある、ギザギザ状の金属「ピック」を氷に打ち込み、身体を前へ進めます。
一方、スティックの反対側にはパックを操作するブレードがあります。選手はスティックを持ち替えながら、推進力を生み出す動作と、パスやシュートを行う動作を切り替えます。移動中にパックを操るには、上半身のバランス、腕の力、瞬時の判断を同時に求められます。
試合時間や人数はどうなっている?日本パラリンピック委員会と日本パラアイスホッケー協会の競技紹介によると、試合は1ピリオド15分、3ピリオド合計45分で行われます。リンク上でプレーするのは、ゴールキーパー1人を含む6人です。選手交代は随時可能で、試合の流れや体力の消耗に応じて頻繁に交代します。
基本的なルールはアイスホッケーに準じます。パックを相手ゴールに入れれば得点となり、反則があれば審判が試合を止めます。同点の場合は大会規定に従って延長戦やシュートアウトで勝敗を決めます。
特に観戦時に注目したいのが、スレッジ同士のボディチェックです。選手はそりに乗った状態で相手と接触するため、スピードだけでなく、接触後の体勢の立て直しやパックの奪い合いにも高い技術が必要になります。激しい接触が認められることから、「氷上の格闘技」とも呼ばれています。
障がいの程度による持ち点制度はある?車いすバスケットボールなどで知られる障がいの程度に応じた持ち点制度は、パラアイスホッケーにはありません。一定の下肢障がいに関する出場資格を満たした選手が競技に参加し、パラリンピックでは男女混合でチームを構成できます。
つまり、競技の見どころは用具の特殊性だけではありません。限られた時間でパックを奪い、味方との連係でゴールを狙うという、アイスホッケー本来の戦術性がそのまま生きています。
【名称変更と歴史】1994年リレハンメルから2018年の転換点まで
パラアイスホッケーの歴史を理解するうえで重要なのが、1994年のリレハンメルパラリンピックと、2018年の競技名称変更です。名称が変わったことと、日本代表の競技史が始まったことは、別々の出来事として整理する必要があります。
1994年に冬季パラリンピックの正式競技へ競技の発祥はスウェーデンとされ、1960年代初頭に身体に障がいのあるアイスホッケー選手たちによって考案されたと伝えられています。その後、北欧諸国を中心に普及し、国際大会が開催されるようになりました。
1994年3月10日から19日まで開催されたリレハンメル冬季パラリンピックでは、アイススレッジホッケーが正式競技として実施されました。日本パラアイスホッケー協会の大会記録によると、当時の参加国はスウェーデン、ノルウェー、カナダ、エストニア、イギリスの5か国です。日本はこの大会には出場していません。
日本での普及につながった大きな節目は、1998年長野パラリンピックに向けた取り組みです。1993年にはノルウェーから講師を招いた講習会が行われ、日本国内で競技を広げるための基盤づくりが始まりました。
「アイススレッジホッケー」から「パラアイスホッケー」へ競技名称の変更は、2018年に突然決まったものではありません。日本パラアイスホッケー協会が公表した経緯によると、2016年6月、モスクワで開催された国際パラリンピック委員会(IPC)のフォーラムで名称変更が決まりました。障がい者スポーツの競技名を国際的に統一し、「パラ」という言葉を共通して使う方向性が示されたためです。
2017年は移行期間として旧名称と新名称の併用が認められ、2018年から「パラアイスホッケー」が正式な名称として使用されるようになりました。したがって、「2018年に名称変更」という理解は正しいものの、変更の決定自体は2016年に行われています。
名称変更によって競技の基本的な仕組みが変わったわけではありません。スレッジ、2本のスティック、氷上でのパスやシュートという競技の特徴は引き継がれています。
日本代表の歴代成績を振り返る日本代表は長野大会から国際舞台で経験を積み、2010年バンクーバーパラリンピックでは銀メダルを獲得しました。一方、出場権を得られなかった大会もあり、国際競争力を維持する難しさも経験しています。
- 1994年・リレハンメル:競技が正式採用された大会。日本は不参加。
- 1998年・長野:日本が開催国として出場し、5位。
- 2002年・ソルトレークシティ:5位。
- 2006年・トリノ:5位。
- 2010年・バンクーバー:銀メダルを獲得。日本代表の歴史に残る好成績。
- 2014年・ソチ:予選敗退により出場できず。
- 2018年・平昌:8位。
- 2022年・北京:最終予選を突破できず、本大会には出場できず。
- 2026年・ミラノ・コルティナ:8位。
この歴史から分かるのは、日本代表の実力が一度の大会結果だけで決まるものではないということです。2010年の銀メダルは大きな実績ですが、その後の出場権獲得や順位の変動を見ると、選手層の厚さや継続的な強化が国際大会の成績を左右することが分かります。
【日本代表メンバー】2026年パラリンピックの選手と最新の強化メンバー
パラアイスホッケー日本代表の選手を調べる際には、パラリンピックに出場したメンバーと、その後の国際遠征や強化合宿に選ばれたメンバーを区別することが大切です。代表候補や遠征メンバーは、シーズンや大会の目的に応じて変わります。
ミラノ・コルティナ2026の代表メンバー日本パラアイスホッケー協会は2026年1月16日、1月12日の理事会で内定した代表選手18人を公表しました。大会に向けた代表チームには、ゴールキーパーを含む選手18人が登録されました。
2026年大会の代表選手は以下の18人です。
- ゴールキーパー:堀江航、岡部学
- ディフェンスを中心に登録された選手:熊谷昌治、須藤悟、那須智彦、塩谷吉寛、松下真大、石川雄大
- フォワードを中心に登録された選手:吉川守、三澤英司、金子幹央、中村俊介、新津和良、福西朱莉、森崎天夢、伊藤樹、鵜飼祥生、河原優星
ポジションは試合での役割を理解する手がかりになります。ゴールキーパーは失点を防ぎ、ディフェンスは相手の攻撃を抑えながら攻撃の起点をつくります。フォワードは前線でパックを運び、シュートや味方へのパスを通じて得点を狙います。実際の起用や役割は、試合展開や戦術によって変わります。
2026年10月時点で注目したい強化遠征メンバー協会が2026年9月24日に発表したスロバキア強化合宿では、2030年フランスアルプス冬季パラリンピックも見据え、現地代表との合同練習や強化試合が計画されました。遠征期間は10月5日から14日までで、参加メンバーは12人です。
遠征メンバーとして公表されたのは、三元大輔、小田島修、松下真大、石川雄大、森崎天夢、鵜飼祥生、新津和良、伊藤樹、中村俊介、永井涼太、河原優星、熊谷昌治の各選手です。
ミラノ・コルティナ大会の代表18人と比べると、遠征メンバーは12人に絞られています。これは大会ごとに代表選考や強化の目的が異なるためです。2026年大会に出場した全選手が、そのまま次の大会の代表に確定しているわけではありません。
現在の選手層を追うなら、協会が発表する代表内定選手だけでなく、強化合宿、国際遠征、育成合宿の参加者にも注目すると、次世代の代表候補が見えてきます。
【2026年の試合日程・結果】日本代表はどのように戦ったのか
ミラノ・コルティナ2026パラリンピックの試合はすべて終了しています。日本代表の試合結果を振り返る際には、予選3試合だけでなく、最終順位を決めるための順位決定ラウンドも含めて確認する必要があります。
日本パラアイスホッケー協会の大会記録と日本国内の公式競技日程をもとに、日本代表の全5試合を日本時間でまとめました。
| 日本時間 | 対戦相手・ラウンド | 試合結果 | 試合の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 3月7日 | チェコ・予選 | 日本 2-3 チェコ | 1点差で惜敗 |
| 3月10日 | カナダ・予選 | 日本 0-14 カナダ | 強豪国との力の差が表れた試合 |
| 3月11日 | スロバキア・予選 | 日本 1-5 スロバキア | 予選3連敗 |
| 3月13日 | イタリア・順位決定ラウンド | 日本 0-5 イタリア | 5~8位の順位決定戦に向けた試合 |
| 3月14日 | スロバキア・7~8位決定戦 | 日本 0-1 スロバキア | 最終順位8位が確定 |
日程を見ると、予選のチェコ戦は2対3と僅差でした。一方、カナダ戦では14失点を喫し、攻守の両面で世界上位との大きな差が表れています。最後のスロバキア戦は0対1で、接戦を勝ち切るための得点力が課題として残りました。
5試合の得点を合計すると、日本は3得点、28失点です。この数字だけで個々の選手の評価を決めることはできませんが、得点を生み出す攻撃の構築と、相手の速い攻撃を抑える守備の両方が、次の強化で問われることを示しています。
次の試合日程はいつ?2026年10月時点で、次の大きな目標として協会が示しているのは、2027年春に予定されている世界選手権Aプールです。新シーズンの公式発表ではAプール残留を目標に掲げていますが、同発表には大会の詳細な開催日程は記載されていません。
今後の試合日程を確認する際は、日本パラアイスホッケー協会の大会情報や遠征発表をチェックするのが確実です。強化合宿の予定と、一般観客が観戦できる公式試合の日程は同じとは限らないため、開催日だけでなく、試合形式や観戦案内も確認しましょう。
【日本代表の強さと実力】世界との差をどう読み解くべきか
日本代表の強さを判断するうえでは、過去の最高成績と直近の大会結果を切り分ける必要があります。2010年バンクーバー大会で銀メダルを獲得した実績は、日本が世界の上位を争った歴史を示しています。しかし、2026年大会では8位となり、現在の国際競争力を改めて検証する段階にあります。
接戦を勝ち切る力と得点力が課題2026年大会のチェコ戦は2対3、スロバキアとの7~8位決定戦は0対1でした。これらの試合は、相手との点差が小さくても勝利につながらない場合があることを示しています。守備を粘り強く維持するだけでなく、限られた得点機会をものにする攻撃力が大切です。
一方、カナダ戦の0対14という結果は、世界トップクラスのチームが持つスピードや攻撃の連続性に対し、対応を強化する必要があることを示しました。日本パラアイスホッケー協会も、大会後の総括で試合展開のスピードやフィジカルコンタクトへの対応力、得点力を課題として挙げています。
2027年に向けた強化の焦点2026-2027シーズンの強化方針では、フィジカル面でチーム全体の力を底上げすることが目標に掲げられました。強化合宿や国際遠征は、個々の技術だけでなく、チーム全体の連係や試合の強度への適応力を高める機会となります。
スロバキアでの強化遠征も、現地代表との合同練習や強化試合を通じて、国際レベルのプレーに対応することを目的としていました。今後は世界選手権Aプールでの結果を通じて、強化の成果がどこまで実戦に結びついたかが問われます。
日本代表を応援する際には、勝敗だけでなく、強豪相手の失点の抑え方、接戦での得点機会、若手選手の出場機会、チームの連係といった観点から試合を振り返ると、成長の過程をより深く理解できます。
【パラアイスホッケー日本代表】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:パラアイスホッケー日本代表の2026年パラリンピックの順位は? A1:ミラノ・コルティナ2026パラリンピックで日本代表は8位でした。予選ではチェコに2対3、カナダに0対14、スロバキアに1対5で敗れ、順位決定ラウンドでもイタリアに0対5、スロバキアに0対1で敗れています。
Q2:パラアイスホッケーとアイススレッジホッケーは違う競技? A2:同じ競技です。以前は「アイススレッジホッケー」と呼ばれていましたが、2016年に名称変更が決まり、2017年の移行期間を経て、2018年から「パラアイスホッケー」という名称が使用されるようになりました。競技の基本的な仕組みが名称変更によって変わったわけではありません。
Q3:パラアイスホッケーではなぜスティックを2本使うの? A3:2本のスティックには、氷をかいて前進するためのピックと、パックを操作するためのブレードが付いています。選手はピックで推進力を生み出し、スティックを持ち替えてパスやシュートを行います。移動とパック操作を同時に行うための、競技独自の用具です。
パラアイスホッケー日本代表を理解するには、競技のルール、名称変更の歴史、代表選手の顔ぶれ、国際大会の結果を一つの流れとして見ることが大切です。スレッジと2本のスティックを使う独特の競技構造は、スピード、パック操作、身体の使い方、チーム戦術が密接に結びついた競技の魅力を生み出しています。
歴史を振り返れば、1994年のリレハンメル大会で正式競技となり、日本代表は1998年の長野大会から国際舞台で経験を重ね、2010年には銀メダルを獲得しました。一方、2026年のミラノ・コルティナ大会では8位となり、得点力やフィジカル面の対応力など、改善すべき課題も明確になっています。
2026年10月現在、次の注目点は2027年春の世界選手権Aプールに向けた強化です。大会の順位だけでなく、代表メンバーの変化、育成合宿、国際遠征、試合内容を継続して確認することで、日本代表の現在地と将来の可能性が見えてきます。
2010年の銀メダルを過去の実績として振り返るだけでなく、2026年の結果から何を改善し、次の国際大会でどのような成果を示すのか。そこに注目することが、パラアイスホッケー日本代表を長期的に応援するうえでの大切な視点です。