野球の試合中継で目にする「ホールド」は、リリーフ投手がチームのリードや勝利につながる状況を守ったときに記録される指標です。先発投手の勝利数や抑え投手のセーブ数と比べると、成立条件が少し複雑で、同点で登板した場合やチームが試合終盤に逆転負けした場合など、判断に迷う場面も少なくありません。
日本野球機構(NPB)の公式記録によると、2026年シーズンのセ・リーグでは巨人の田中瑛斗投手が42ホールド、パ・リーグではオリックスの椋木蓮投手とロッテの鈴木昭汰投手が33ホールドでトップに並びました。また、通算ホールドの歴代最多記録は日本ハムの宮西尚生投手が持つ424です。ホールドの基本ルールから2026年の最新ランキング、最優秀中継ぎ投手賞との関係まで、実際の記録を交えながら整理します。
【基本を解説】野球のホールドとは?中継ぎ投手を評価する記録

ホールド(Hold、略号HLD)とは、主に試合途中から登板した救援投手が、所定の条件を満たしてチームのリードを維持するなどした場合に記録される成績です。日本プロ野球では2005年にホールドの定義が整理され、現在の制度につながる記録方式が導入されました。
ホールドが設けられた背景には、試合の最後を締めくくる抑え投手だけでなく、その前の重要な局面を任される中継ぎ投手の貢献も評価したいという考えがあります。NPBが2005年に公表した記録制度の変更でも、ホールドと救援勝利を合算したホールドポイントが、最優秀中継ぎ投手賞の基準として示されています。
例えば、チームが5対4でリードしている8回に中継ぎ投手が登板し、1アウト以上を取り、リードを保ったまま次の投手に交代したとします。登板時の状況やほかの条件を満たしていれば、この投手にはホールドが記録されます。その後、抑え投手が9回を無失点で抑えれば、前の投手にホールド、最後の投手にセーブが付く可能性があります。
ここで重要なのは、ホールドが単に「中継ぎ投手が無失点に抑えた」という意味ではないことです。登板時の点差、走者の状況、アウト数、降板時のリード、そして勝利投手などの別の記録が付くかどうかまで確認する必要があります。
【条件を整理】NPBでホールドが付く場面は?点差・登板状況別に解説
NPBのホールドには、大きく分けてリードを守って降板するケースと、同点の場面から登板して所定の条件を満たすケースがあります。公式ルールでは、救援投手が勝利・敗北・セーブ・引き分けの記録を得ていないことも条件です。
1.リードしている場面で登板する代表的なのは、チームがリードしている終盤に登板し、セーブの条件を満たす状況で1アウト以上を取り、リードを保って降板するケースです。
よく知られているのは、3点以内のリードで登板する場面です。ただし、点差だけで決まるわけではありません。同点に追いつく走者が塁上にいる、打席に立っている、あるいは次打者として控えているなど、相手の追いつく可能性が高い状況もセーブ機会に関係します。
例えば、7回終了時にチームが4対2でリードし、8回に中継ぎ投手が登板したとします。1アウト以上を取り、相手に追いつかれることなくリードを保って交代すれば、ほかの条件を満たす限りホールドの対象になります。
2.1アウト以上を取ることが必要ホールドを記録するには、原則として登板中に1アウト以上を取る必要があります。打者を1人もアウトにできずに交代した場合は、リードしたままでも通常のホールド条件を満たしません。
また、登板時にリードしていたとしても、自分が投げている間に逆転され、リードを保ったまま降板するという条件を満たせなければ、ホールドは付きません。単に試合の途中で投げたという事実だけでは記録されないのです。
3.走者を残して交代した場合は注意中継ぎ投手がリードを守って降板しても、塁上に残した走者の扱いによって記録が変わる場合があります。NPBの規定では、その走者が後続投手によって生還し、同点またはビハインドになった場合、前の投手にはホールドが与えられません。
例えば、5対4でリードしている8回、2アウト一、二塁で中継ぎ投手が交代したとします。後続投手が前の投手の残した走者に同点のホームを踏ませれば、前の投手はホールドの条件を満たさなくなります。交代時のスコアだけでなく、残した走者がどうなったかも確認することが大切です。
【比較表】ホールドとセーブの違い、勝利投手・ホールドポイントとの関係
ホールドとセーブは、どちらも救援投手の働きを評価する記録ですが、役割が異なります。ホールドは主に次の投手へリードを引き継ぐ働き、セーブは勝利したチームで最後を締めくくる働きに対応します。
一方、勝利投手はチームが勝利する過程で、勝ち越しやリードの維持などの条件に基づいて記録されます。ホールドを記録した投手は、同じ試合で勝利投手やセーブ投手にはなりません。
| 記録・項目 | 意味・主な条件 | 押さえておきたい違い |
|---|---|---|
| ホールド | 所定の条件を満たし、リードを守るなどして次の投手に交代する救援投手の記録 | 1試合で複数の投手に付くことがある |
| セーブ | 勝利チームの最後の投手が、規定の条件を満たして試合を締めくくる記録 | 原則として試合を終わらせた救援投手に付く |
| 勝利投手 | チームの勝利に対して、投球状況や規定に基づいて記録される勝ち星 | ホールドとは別の記録で、同じ試合で両方が付くことはない |
| ホールドポイント(HP) | ホールド数と救援勝利数の合計 | 最優秀中継ぎ投手賞の基準となる |
| セーブポイント | 過去に使われたセーブと救援勝利の合算指標 | 現在のNPBの最優秀中継ぎ投手賞の基準とは異なる |
NPBの公式発表では、ホールド要点は「ホールド+救援勝利」と定義されています。つまり、ホールドを多く記録した投手が必ずしもホールドポイントでもトップになるとは限りません。救援で挙げた勝利数も合算されるためです。
この違いはタイトル争いを見るときにも重要です。2026年のセ・リーグでは田中瑛斗投手が42ホールドに救援勝利3を加えて45ホールドポイントを記録しました。パ・リーグでは鈴木昭汰投手が33ホールドと救援勝利6で39ホールドポイントとなり、最優秀中継ぎ投手賞を獲得しています。
【要注意】ホールドは同点でも付く?チームが逆転負けした場合の扱い
ホールドのルールで混乱しやすいのが、同点で登板した場合と、ホールドを記録した後にチームが逆転負けした場合です。ここはNPBの公式規定に沿って考えると整理できます。
同点で登板した場合NPBでは、同点の場面で登板した救援投手にも、一定の条件を満たせばホールドが付くことがあります。登板中に1アウト以上を取り、前任投手が残した走者も含めて規定に沿って失点を防ぎながら降板することが基本です。自チームが得点してリードを奪った後は、リードを保つことが条件となる場合があります。
ただし、同点で登板して無失点に抑えたというだけで、必ずホールドになるわけではありません。勝利投手など別の記録が付く場合や、登板中の経過が規定を満たさない場合は、ホールドの対象になりません。
なお、MLBのホールドの定義は、セーブ機会に登板してリードを次の救援投手に引き継ぐことを基本としているため、同点で登板した投手の扱いはNPBと同じではありません。
ホールドを記録したのに、チームが逆転負けした場合ホールドは、チームが最終的に勝ったかどうかだけで決まる記録ではありません。中継ぎ投手が規定どおりにリードを保って降板した後、別の投手が逆転を許してチームが負けても、前の投手のホールドがそのまま残ることがあります。
一方、前の投手が残した走者によって後続投手が同点や逆転を許した場合は、前述のとおりホールドが認められない場合があります。また、ホールドを記録する投手自身に敗戦投手の記録が付く場合は、NPBのホールド条件を満たしません。
このため、試合終了時の勝敗だけを見てホールドの有無を判断するのは正確ではありません。登板した時点の点差、降板時の状況、残した走者、その後に付いた投手記録を順に確認する必要があります。
【2026年最新】ホールドランキングと宮西尚生の通算記録
2026年シーズンのホールドランキングは、リーグごとに見ると特徴がはっきりします。NPB公式の2026年度成績では、セ・リーグのホールド最多は巨人の田中瑛斗投手で42、パ・リーグではオリックスの椋木蓮投手とロッテの鈴木昭汰投手が33で並びました。
最優秀中継ぎ投手賞は、ホールド数そのものではなくホールドポイントで決まります。2026年のセ・リーグでは田中瑛斗投手が45ポイント、パ・リーグでは鈴木昭汰投手が39ポイントで、それぞれタイトルを獲得しました。
| 区分 | 順位・投手 | 記録 |
|---|---|---|
| 2026年セ・リーグ最多ホールド | 田中瑛斗(巨人) | 42ホールド |
| 2026年セ・リーグ2位 | 星知弥(ヤクルト) | 31ホールド |
| 2026年セ・リーグ3位 | レイノルズ(DeNA) | 30ホールド |
| 2026年パ・リーグ最多ホールド | 椋木蓮(オリックス)、鈴木昭汰(ロッテ) | 各33ホールド |
| 2026年パ・リーグ3位 | 松本裕樹(ソフトバンク) | 32ホールド |
| 2026年セ・リーグ最優秀中継ぎ | 田中瑛斗(巨人) | 45ホールドポイント |
| 2026年パ・リーグ最優秀中継ぎ | 鈴木昭汰(ロッテ) | 39ホールドポイント |
| NPB通算ホールド歴代1位 | 宮西尚生(日本ハム) | 424ホールド |
| NPB通算ホールド歴代2位 | 山口鉄也 | 273ホールド |
| NPB通算ホールド歴代3位 | 浅尾拓也 | 200ホールド |
通算記録で際立つのは宮西尚生投手です。NPB公式の2026年度シーズン終了時点の通算記録では、宮西投手が424ホールドで歴代1位。2位の山口鉄也氏の273ホールド、3位の浅尾拓也氏の200ホールドを大きく上回っています。
ホールドの歴代記録を比較するときは、集計対象にも注意が必要です。NPBでは2005年にホールドの定義が変更され、それ以前の旧制度の数字を現在の通算記録にそのまま累積しない扱いが示されています。年度をまたいだ比較では、同じ基準で集計された記録かどうかを確かめることが大切です。
【日米比較】NPBとMLBのホールド条件、中継ぎ投手の役割
ホールドは日本だけの考え方ではありません。MLBでも救援投手の働きを評価する指標として使われており、MLB公式の用語解説では、セーブ機会に登板して少なくとも1アウトを取り、次の救援投手にリードを引き継ぐことが基本とされています。
MLBの説明では、3点以内のリードを守りながらアウトを取るケースのほか、同点に追いつく走者が塁上・打席・次打者にいる状況でアウトを取るケースがホールドの条件として示されています。一方、NPBには同点時に登板した投手を対象とする独自の条件があり、日米の記録を比べるときは単純に数字だけを並べないことが重要です。
また、MLBではホールドを記録した投手が、同じ試合で後から敗戦投手になる場合もあります。たとえば、リードを保って降板した後に、残した走者が後続投手によって生還し、相手が逆転するケースです。NPBでは敗戦投手の記録を得ていないことがホールドの条件に含まれるため、この点も異なります。
中継ぎ投手の役割は、単に先発と抑えの間をつなぐことではありません。試合終盤の得点圏や僅差のリードなど、失点が勝敗に直結する場面を任されることも多く、1アウトや1イニングの価値が大きくなります。ホールドは、そうした登板状況と役割を数字で把握するための指標です。
ただし、ホールド数だけで投手の実力を完全に評価することはできません。登板機会はチームの勝ちパターンや試合展開に左右されるため、防御率、投球回、奪三振、与四球、登板数なども併せて見ると、より立体的に投手の働きを理解できます。
【ホールドとは野球】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ホールドは何点差まで付く?
A1:代表的なのは3点以内のリードでセーブ機会に登板し、1アウト以上を取ってリードを保つケースです。ただし、同点に追いつく走者の状況など、点差以外の条件も関係します。
Q2:ホールドとセーブは同じ試合で付く?
A2:はい。条件を満たせば、中継ぎ投手にホールド、最後を締めくくった投手にセーブが記録されることがあります。ただし、同じ投手が同じ試合でホールドとセーブの両方を記録することはありません。
Q3:チームが逆転負けしてもホールドは付く?
A3:付く場合があります。ホールドを記録する投手がリードを保って降板し、その後に別の投手が逆転を許した場合などです。ただし、残した走者が同点や逆転の得点になった場合や、本人に敗戦投手の記録が付く場合は、NPBの条件を満たさないことがあります。
野球のホールドは、中継ぎ投手が重要な場面でチームのリードを守る働きを評価する指標です。セーブのように試合を最後まで締めくくる必要はなく、条件を満たす複数の救援投手に記録される場合があります。同点での登板や逆転負けのケースでは、登板時の状況、アウト数、残した走者、勝利・敗戦などの記録を確認することが欠かせません。
2026年シーズンは、セ・リーグで田中瑛斗投手が42ホールド、パ・リーグでは椋木蓮投手と鈴木昭汰投手が33ホールドを記録しました。最優秀中継ぎ投手賞はホールドポイントで決まり、通算ホールドでは宮西尚生投手が424で歴代最多を維持しています。
【プロの結論】ホールドを正しく理解するには、数字だけでなく「いつ登板し、どんな状況を守り、どのように交代したか」を見ることが大切です。ホールド数は中継ぎ投手の貢献を知る手がかりですが、防御率や投球回などと組み合わせてこそ、試合を支える救援陣の価値が見えてきます。