「札幌ドームざまぁ」という言葉が検索される背景には、北海道日本ハムファイターズの本拠地移転後に発生した巨額赤字と、移転先のエスコンフィールド北海道が独自の収益モデルを築いたことへの関心がある。かつてプロ野球の試合で多くの観客を集めた札幌ドームは、2023年度に約6億5,100万円の純損失を計上。ところが、2026年3月期には売上高22億800万円、営業利益2億1,100万円を記録し、経営状況が大きく改善した。
2026年10月現在、施設は「大和ハウス プレミストドーム」の愛称で運営されている。2026年度の稼働率は74%を目指し、2030年度には80%への引き上げを計画する。ただし、黒字化だけで経営再建が完了したわけではない。イベント誘致の実績、札幌市による支援、施設の維持管理費、そしてエスコンフィールドとの事業構造の違いまで確認すると、「札幌ドームざまぁ」という評判だけでは捉えきれない実態が見えてくる。
【なぜ「札幌ドームざまぁ」と言われるのか】日本ハム移転後に起きた経営危機

「札幌ドームざまぁ」という検索語が広がった最大の理由は、北海道日本ハムファイターズの移転によって、札幌ドームの経営を支えていた重要な利用機会が失われたことにある。
日本ハムは2004年に北海道へ本拠地を移し、札幌ドームを主催試合の開催場所として利用してきた。しかし、2023年に北広島市のエスコンフィールドHOKKAIDOが開業すると、球団は新球場へ本拠地を移転した。これにより、札幌ドームは年間を通じて安定的に開催されていたプロ野球の主催試合を失った。
問題は、野球の試合がなくなったことだけではない。大型施設は、開催日以外にも設備の維持、管理、人件費などの負担が生じる。固定的な支出がある一方、興行収入や施設利用料が減少すれば、利益は急速に悪化する。
移転の背景には、球団と施設側の収益構造の違いもあった。報道では、球場使用料の負担や、飲食・グッズ販売などの収益を球団自身の事業として拡大しにくい契約構造が移転の要因として取り上げられてきた。エスコンフィールドでは、球団と球場運営を一体化し、観戦体験だけでなく飲食、物販、不動産なども含めた収益モデルを構築できる。
札幌ドーム側にとっては、長年の主要利用者を失った後、別のイベントを誘致して穴を埋める必要が生じた。2023年度の決算では、売上高が12億7,100万円まで減少し、営業損失は約6億7,200万円、純損失は約6億5,100万円に達した。札幌市の公表資料でも、日本ハム移転後の利用日数と来場者数の減少が、業績悪化の要因として説明されている。
ただし、移転による経営危機と、施設そのものの価値は分けて考えるべきだ。全天候型の大規模施設には、コンサート、ラグビー、サッカー、展示会、eスポーツなどに対応できる利点がある。問題は、施設の規模に見合う需要を継続的に確保し、収入につなげられるかどうかだった。
【赤字から黒字へ】札幌ドームの決算と来場者数を時系列で比較
札幌ドームの経営状況を判断するには、「赤字だった」「黒字になった」という一言だけでは不十分だ。売上高、営業利益、純利益、稼働率、来場者数を合わせて見る必要がある。以下は、株式会社札幌ドームの公表決算資料に基づく年度別の推移だ。金額は原則として百万円未満を切り捨てている。
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 | 稼働率 | 総来場者数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年度 | 29億7,600万円 | 7,000万円 | 1億2,000万円 | 60.3% | 約176万8,000人 |
| 2023年度 | 12億7,100万円 | 約▲6億7,200万円 | 約▲6億5,100万円 | 62.6% | 約109万4,500人 |
| 2024年度 | 17億8,700万円 | 約▲5,600万円 | 4,200万円 | 70.4% | 約118万7,300人 |
| 2025年度 | 22億800万円 | 2億1,100万円 | 1億5,400万円 | 71.0% | 約130万6,000人 |
出典は株式会社札幌ドームの第27期・第28期決算概要。2025年度は2026年3月期を指す。なお、2023年度は日本ハム移転後の2024年3月期、2024年度は2025年3月期に当たる。
数字から分かるのは、2023年度に売上高が大幅に落ち込んだ後、2024年度から回復が進み、2025年度には営業利益も黒字に転換したという流れだ。2024年度は純利益こそ黒字だったが、営業利益は約5,600万円の赤字だった。このため、2026年3月期の営業黒字化は、移転後の経営改善を評価するうえで大きな節目となる。
来場者数も回復している。2025年度の総来場者数は約130万6,000人で、前年度の約118万7,000人から約10%増加した。イベント来場者数は120万3,000人に達し、観光来場者や一般市民利用者なども10万2,000人に増えた。
一方、2025年度のイベント開催日数は119日で、前年度の129日を下回った。つまり、開催日数を増やすだけでなく、コンサートなどの集客力が高い催事、利用者サービス、イベントに付随する業務収入を組み合わせることで、売上高と利益を伸ばしたことが重要だ。決算資料は、こうした収入増に加えて、ネーミングライツの通年計上や利用料金の改定も増収要因に挙げている。
【2026年最新】黒字化の実態と稼働率74%のイベント誘致戦略
2026年3月期の決算は、札幌ドームの再建が数字に表れたことを示している。株式会社札幌ドームが2026年6月25日に公表した第28期決算概要によると、売上高は22億800万円、営業利益は2億1,100万円、経常利益は2億8,500万円、当期純利益は1億5,400万円だった。
前年度と比べると、売上高は4億2,100万円増加した。貸館事業の売上高は14億2,000万円で前年度比14.3%増、商業事業は3億1,500万円で同79.4%増となった。コンサートの物販収入や大規模イベントに伴う受託業務の増加などが、業績改善を支えた。
ただし、純利益だけを見て経営が完全に立ち直ったと判断するのは早い。第28期には投資有価証券売却益という特別利益が計上された一方、賃貸事務所用のオフィス棟について減損損失も計上されている。継続的な事業の収益力を見る際には、特別な利益・損失を含む純利益だけでなく、通常の事業活動から得た営業利益の推移を確認することが欠かせない。
2026年度の稼働率については、さらに上昇する見通しが示されている。北海道文化放送(UHB)が2026年10月6日に報じたところによると、札幌ドームの阿部晃士社長は、2026年度の稼働率を74%とする見通しを説明した。前年度の71%を上回る計画であり、2030年度までに80%を達成するという目標に向けた一歩となる。
ここで注意したいのは、74%は2026年度の見通しであって、2026年10月時点で確定した通期実績ではないという点だ。実績として確定している2025年度の稼働率は71.0%である。将来の予約やイベント開催予定は重要な先行指標だが、最終的な業績は開催の実現状況や収益性によって変わる。
イベント誘致の対象も広がっている。サッカーJリーグの試合に加え、コンサート、eスポーツ大会、ラグビー、一般向けイベントなどが施設利用の柱になっている。2026年度にはSnow Manやブルーノ・マーズの公演も予定されているとUHBが報じた。加えて、紙飛行機の飛行距離を競う大会など、広い空間を生かした自主イベントも展開している。
この戦略の要点は、イベントの開催日数だけを追うのではなく、イベントごとの収益を高めることにある。設営・撤去、警備、清掃、物販、駐車場、飲食などを含め、主催者と連携して収入機会を広げる必要がある。稼働率が高くても、開催コストがかさみ利益が残らなければ、持続的な再建にはつながらない。
【札幌市の公金支出】黒字でも「完全復活」と言い切れない理由
札幌ドームの黒字化を評価する際に、避けて通れないのが札幌市の支援と施設維持費の問題だ。株式会社札幌ドームは運営会社であり、建物の所有者は札幌市である。運営会社の決算と、建物を所有する自治体の支出は、会計上、同じものではない。
2025年度には、札幌市がドームでのイベント誘致を後押しする施策や、アマチュア大会の利用料金を減免するための補助を実施していた。ライブドアニュースが2026年10月に報じた市の決算資料の分析では、イベント誘致などの活用促進に約1億2,000万円、アマチュア大会の利用料金減免補塡に約2億2,000万円、合計約3億4,000万円が計上されていた。
ただし、この約3億4,000万円をそのまま「税金による赤字補填」と呼ぶのは正確ではない。札幌市長は2025年1月の会見で、利用者への支援には、過去に札幌ドームから市へ還元された利益を積み立てたスポーツ振興基金を活用する考えを説明している。基金を使った支援と、一般財源からの税負担は区別して評価する必要がある。
加えて、札幌市は2026年度から札幌ドーム活用促進費を廃止する判断を示した。2026年4月の市長会見では、これまで新規イベントの誘致を補助してきたものの、業績改善や冬季イベントの定着を踏まえ、支援制度がなくても自立した経営を目指せる見通しになったことが理由として説明された。
一方で、建物そのものの保全や改修は別の問題だ。大規模な屋根付き施設を長期間使い続けるには、設備更新や修繕が必要になる。こうした費用は、市が所有する施設の維持管理に関する支出として発生し得るため、運営会社の営業利益だけを見て施設全体の経済性を判断することはできない。
つまり、札幌ドームの黒字化は重要な改善だが、真の自立経営を評価するには、運営会社が継続的に利益を出せるか、行政支援をどこまで縮小できるか、施設の保全費用を含めた公共資産としての費用対効果が妥当か、という3つの視点が必要になる。
【エスコンフィールドと徹底比較】移転後に明暗を分けた収益モデル
札幌ドームとエスコンフィールド北海道の違いは、単に新旧の球場の違いではない。最大の差は、誰が施設を運営し、どの収入を事業として取り込めるかというビジネスモデルにある。
札幌ドームは札幌市が所有する公の施設で、株式会社札幌ドームが指定管理者として運営する。一方、エスコンフィールドは北海道ボールパークFビレッジの中核施設であり、北海道日本ハムファイターズの球団運営と球場事業を組み合わせた収益戦略が可能になった。
経済産業省の資料では、ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの売上高は、札幌ドームを本拠地としていた2019年の157億円から、エスコンフィールド開業後の2023年には251億円へ増加したと紹介されている。広告収入やチケット収入の増加に加え、札幌ドーム時代には球団側の収入として存在しなかった飲食収入や不動産収入が加わったことも、増収の要因として挙げられている。
ただし、この157億円と251億円は球場運営会社だけの売上高ではなく、球団関連事業会社の売上高である。札幌ドームの運営会社が2026年3月期に計上した22億800万円と単純に比較し、どちらの施設が何倍優れていると結論づけることはできない。事業範囲も収益の帰属先も異なるためだ。
それでも、エスコンフィールドの事例から得られる教訓は明確だ。球場を試合開催のためだけに使うのではなく、観戦、飲食、物販、広告、周辺開発を一体で設計することで、収益機会を増やせる。札幌ドームが目指すべきなのも、野球の代わりになるイベントを一つ見つけることではなく、複数の収益源を持つ運営モデルを確立することだ。
札幌ドームは2024年8月1日から「大和ハウス プレミストドーム」の愛称を使用している。大和ハウス工業とのネーミングライツ契約期間は2028年7月31日までの4年間で、契約金額は非公表だ。命名権収入は広告事業の増収に寄与したが、契約があるだけで施設の経営問題がすべて解決するわけではない。契約終了後も見据え、広告収入やイベント収入を継続的に確保できるかが課題となる。
【評判・口コミと今後の課題】札幌ドームは本当に復活したのか
札幌ドームの評判には、経営への批判と、施設としての評価が混在している。移転後の赤字や球団との関係に厳しい目が向けられる一方、全天候型で大規模なイベントを開催できることは、依然として施設の強みだ。口コミを読む際には、経営方針への評価と、実際に訪れた際のアクセス、座席、音響、混雑などの体験を区別する必要がある。
株式会社札幌ドームが公開した2025年度のオンラインリサーチには、1,314人が回答した。回答者が魅力を感じるイベントとしてはコンサートが最も多く、次いで北海道コンサドーレ札幌の試合が挙がった。施設では展望台への関心が高かった一方、新しい取り組みについて「知っているものはない」と答えた人も60.2%いた。新規事業を始めるだけでなく、利用者に認知してもらい、実際の来場につなげることが課題になっている。
同調査では、2024年に導入された新愛称を知っている回答者は87.2%だったが、そのうち実際に新愛称を使用している人は41.1%にとどまった。名称の認知度が上がっても、日常的な呼称として定着するには時間がかかる。施設ブランドの浸透も、イベント誘致と並ぶ長期的な取り組みとなる。
今後の経営計画「DOME ReSTART PLAN」では、2030年度までに売上高30億円、稼働率80%を目指している。2025年度の売上高22億800万円から約8億円の上積みが必要であり、稼働率も71.0%から約9ポイント引き上げなければならない。単発の大型公演だけに頼らず、平日イベント、自主企画、観光コンテンツ、ドローン関連事業などを組み合わせ、安定した収入源を育てることが求められる。
加えて、2028年度以降の指定管理のあり方も重要だ。札幌市の行政評価資料では、次期指定管理者の更新に向けて、民間のノウハウを生かした運営体制や、行政的支援のあり方を含めて幅広く検討する必要性が示されている。現在の運営会社が黒字を出し続けられるかだけでなく、公共施設としての役割と経営効率をどう両立するかが、次の論点となる。
【札幌ドームざまぁ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:札幌ドームは2026年に黒字化したのですか?
A1:はい。2026年3月期の決算では、売上高22億800万円、営業利益2億1,100万円、当期純利益1億5,400万円となりました。日本ハム移転後、営業利益が初めて黒字に転じ、純利益も2期連続の黒字となっています。
Q2:札幌ドームの稼働率74%は確定した実績ですか?
A2:いいえ。74%は2026年度の見通しです。確定している2025年度の稼働率は71.0%で、2030年度までに80%を達成する目標が掲げられています。
Q3:札幌ドームの黒字化には税金が使われているのですか?
A3:運営会社の黒字と札幌市の支出は分けて考える必要があります。2025年度にはイベント誘致やアマチュア大会の利用料金支援があり、その財源には過去の利益還元を積み立てたスポーツ振興基金が使われていました。札幌市は2026年度からイベント活用促進費を廃止する判断を示していますが、市有施設の維持管理費などは別途検討が必要です。
【プロの結論】札幌ドームの黒字化は復活の第一歩にすぎない
「札幌ドームざまぁ」という言葉は、日本ハム移転後の経営危機を象徴している。しかし、2026年3月期の決算を見る限り、札幌ドームは赤字を出し続ける状態から脱し、営業利益を確保できる段階へ進んだ。稼働率や来場者数も回復しており、イベント誘致や収益源の多角化が一定の成果を上げている。
一方、黒字化と完全な自立経営は同じではない。特別損益の影響、公共支援の縮小、施設保全費、ネーミングライツ契約終了後の収入確保など、検証すべき点は残る。今後の評価では、営業利益の継続性、イベント1件当たりの収益性、札幌市の支援に依存しない運営体制、そして市民への利益還元を確認したい。
エスコンフィールドとの比較から学ぶべきなのは、単に日本ハムを失ったことへの反省ではない。大規模施設の価値は、建物の規模や過去の実績だけでは決まらず、利用者に選ばれる企画と収益を生む仕組みを継続して作れるかどうかで決まる。札幌ドームが2030年度の売上高30億円、稼働率80%という目標を達成し、市民に持続的な利益を還元できるか。それが、ネット上の評価を超えて「本当に復活した」と判断するための基準になる。