「珍しい血液型」と聞くと、Rhマイナスや、世界でも極めて少ないとされるボンベイ型、Rh null型などを思い浮かべる人が多いのと考えられます。しかし、血液型の珍しさは、単純に人口に占める割合だけでは決まりません。輸血に必要な血液を確保できるかどうか、特定の赤血球抗原が欠けているかどうかによっても、医療上の希少性は大きく変わります。
2026年現在、日本赤十字社はRh陰性の頻度や、ボンベイ型、D--型などのまれな血液型に関する情報を公開しています。また、厚生労働省の2026年度の献血推進計画でも、まれな血液型の血液を確保するための取り組みが盛り込まれています。日本人のRhマイナスの割合は約0.5%ですが、さらに珍しい血液型では、通常の血液型検査だけでは判定が難しかったり、輸血に適した血液の確保に時間がかかったりすることがあります。
【珍しい血液型ランキング】稀血とは何か、珍しさを決める基準

稀血(まれな血液)とは、出現頻度が低く、輸血に必要な血液を確保することが難しくなる可能性のある血液型を指します。日本赤十字社の説明では、出現頻度がおおむね1%以下の血液型が目安とされています。
ただし、1%以下であれば、すべてが同じ程度に珍しいわけではありません。特定の抗原を持たない人が比較的多い血液型もあれば、世界的に見ても該当する献血者が非常に少ない血液型もあります。血液型の比較では、人口に占める割合と、必要な血液を実際に確保できるかどうかを分けて考える必要があります。
珍しい血液型ランキングを考えるうえで、代表的なものを整理すると次のようになります。厳密な順位ではなく、公開資料で確認できる頻度や輸血上の特徴を基にした比較です。
- Rh null型:Rh血液型システムの抗原がすべて欠けている極めてまれな型です。
- ボンベイ型:ABO式血液型の抗原形成に必要なH抗原が赤血球に発現しない特殊な型です。
- D--型:RhD抗原は持つ一方、C・c・E・e抗原を欠く型で、適合血の確保が難しくなることがあります。
- cisAB型:AとBの性質を持つ遺伝子が同じ染色体上に存在する、ABO式血液型の亜型です。
- Rh陰性:日本人では約0.5%。一般的なRh陰性は献血時の検査などで把握されているため、上記の極めてまれな型とは事情が異なります。
日本赤十字社の「赤血球の血液型」では、ボンベイ型、para-Bombay型、D--型、Rh null型などを、輸血上の対応が必要なまれな血液型として紹介しています。Rh陰性も人口に占める割合は低いものの、献血時の検査や供給体制が整っているため、すべてのRh陰性を極めてまれな血液型と同列に扱うわけではありません。
つまり、最も珍しい血液型を一つだけ挙げるよりも、どの抗原が欠けているのか、どの地域の集団で調べたのか、輸血に必要な血液をどれほど確保しにくいのかを確認するほうが、実態を正しく理解できます。
【割合を数字で比較】日本人のRhマイナスとRh陰性AB型の出現頻度
日本人の血液型の割合は、一般的な目安としてA型約40%、O型約30%、B型約20%、AB型約10%です。このABO式血液型に、赤血球表面のD抗原の有無によって区別するRh式血液型を組み合わせると、血液型の希少性をより具体的に理解できます。
日本赤十字社の兵庫県赤十字血液センターが公開している数値では、日本人のRh陰性は約0.5%です。ABO式血液型別の内訳は、次のとおりです。
| 血液型 | 日本人に占める割合の目安 | 人数に換算した目安 |
|---|---|---|
| A型・Rh陰性 | 約0.20% | 約500人に1人 |
| O型・Rh陰性 | 約0.15% | 約670人に1人 |
| B型・Rh陰性 | 約0.10% | 約1,000人に1人 |
| AB型・Rh陰性 | 約0.05% | 約2,000人に1人 |
| Rh陰性全体 | 約0.50% | 約200人に1人 |
| cisAB型 | 日本人献血者を対象とした研究報告では約0.0012% | 約8万3,000人に1人相当 |
| ボンベイ型・D--型・Rh null型 | 国内で一律に示せる頻度は限定的 | 個別の検査・登録情報などによる把握が必要 |
※Rh陰性の数値は日本赤十字社の公開情報を基にしています。cisAB型の数値は、日本人献血者について報告された研究上の頻度であり、日本人全体の確定的な有病率を示すものではありません。各数値は調査対象や集計方法が異なるため、単純な順位付けには注意が必要です。
Rh陰性のAB型は、Rh陰性全体の中でも特に少ない組み合わせです。日本赤十字社の資料では、AB型が約10%、Rh陰性が約0.5%であることから、AB型かつRh陰性は約2,000人に1人と説明されています。
ただし、Rh陰性であること自体が病気を意味するわけではありません。Rh陰性は、赤血球表面にあるD抗原を持たないという血液型の特徴です。健康状態や性格、身体能力の優劣を示すものではありません。
また、欧米の一部の集団ではRh陰性の割合が15%を超えると日本赤十字社は説明しています。日本人の約0.5%という数値を世界共通の割合として扱うことはできず、血液型の頻度には集団による違いがあります。
【仕組みを解説】ボンベイ型・cisAB型・D--型・Rh null型の特徴
珍しい血液型の多くは、赤血球の表面にある抗原の種類や量、抗原を作る遺伝子の働きに関係しています。見た目や自覚症状から判別できるものではなく、特殊な血液検査や遺伝子検査によって詳しく調べる必要があります。
ボンベイ型:通常のO型とは異なる理由ボンベイ型は、1952年にインドのボンベイ(現在のムンバイ)で報告されたことに由来する血液型です。通常の赤血球では、まずH抗原という物質が形成され、その上にA抗原やB抗原が作られることでABO式血液型が決まります。
ボンベイ型では、遺伝的な要因によって赤血球にH抗原が発現しません。そのため、A抗原もB抗原も形成されず、一般的な検査ではO型のように見える場合があります。
大きな違いは、血清中に抗H抗体を持つことがある点です。通常のO型の赤血球にもH抗原は存在するため、ボンベイ型の人に通常のO型の赤血球を輸血すると、重い溶血性輸血副反応を引き起こす危険があります。原則として、適合するボンベイ型の赤血球を確保する必要があります。
一方、para-Bombay型は、H抗原が赤血球にほとんど発現しない、あるいはごく弱く発現するなど、ボンベイ型とは異なる特徴を持つ型です。両者は関連していますが、同じものとして扱うことはできません。
cisAB型:A型とB型の遺伝子が同じ染色体にあるcisAB型は、ABO式血液型の中でも珍しい亜型です。一般的なAB型では、A型に関係する遺伝子とB型に関係する遺伝子を、それぞれ別の染色体から受け継ぎます。これに対し、cisAB型では、AとBの性質を持つ遺伝子が同じ染色体上に存在します。
この遺伝子の組み合わせによって、赤血球に発現するA抗原とB抗原の強さが通常とは異なる場合があります。血液型検査の結果が典型的なAB型と一致しなかったり、検査方法によって反応の強さが異なったりすることもあります。
cisAB型は病気ではなく、通常はそれ自体による健康上の問題はありません。ただし、輸血の際には血液型の判定や抗体の有無を詳しく確認する必要があります。
2025年10月にTBS NEWS DIGが紹介した愛媛大学医学部附属病院の解説では、cisAB型の人は日本全国で約1,500人といわれ、徳島県では全国平均より多いとする報告が紹介されました。日本人献血者を対象とした研究にも異なる頻度の推定値があり、全国の人数や割合は、調査対象と推計方法を区別して理解することが大切です。
D--型:D抗原があっても珍しい血液型になるD--型は、Rh血液型システムに属する非常に珍しい血液型です。通常のRh陰性がD抗原を持たない型であるのに対し、D--型ではD抗原を持ちながら、C・c・E・eというほかの主要なRh抗原を欠いています。
そのため、D--型の人が特定のRh抗原に対する抗体を作ると、適合する血液の確保が非常に難しくなる場合があります。特に、抗Rh17(抗Hr0)という抗体が問題となることがあり、輸血だけでなく妊娠・出産に関連した医療管理でも注意が必要です。
2026年に発表された国際的な医学レビューでも、D--型の判定、抗体の管理、まれな献血者を確保する体制が重要な課題として整理されています。
Rh null型:Rh抗原をすべて欠く極めてまれな型Rh null型は、赤血球表面にRh血液型システムの抗原がすべて発現しない型です。単にD抗原がないRh陰性とは異なり、RhDやRhCEに関係する抗原が欠けている点が特徴です。
原因には、Rh関連タンパク質の形成に関係するRHAG遺伝子の異常や、RHCEなどの遺伝子に関係する異常があります。遺伝的な仕組みの違いから、Rh null型はさらに分類されます。
Rhタンパク質は赤血球膜の構造にも関係するため、この型では赤血球の寿命が短くなり、慢性的な溶血性貧血などが見られることがあります。また、輸血が必要になった場合には、適合する献血者を見つけることが極めて難しくなります。
Rh null型は、俗に「ゴールデンブラッド」と呼ばれることもあります。しかし、この呼び名から「どんな血液型の人にも輸血できる万能な血液」と誤解するのは適切ではありません。むしろ、Rh null型の人自身が輸血を必要としたときに、適合血の確保が難しいことが医療上の大きな課題です。
【遺伝と見分け方】珍しい血液型はなぜ生まれるのか
血液型は、親から受け継ぐ遺伝子によって決まります。ABO式血液型の場合、赤血球の表面にある糖鎖構造が重要です。日本赤十字社の「赤血球の血液型」の解説によれば、A型とB型ではそれぞれ異なる働きを持つ酵素が関係し、O型ではA・B抗原を形成する働きが異なります。
珍しい血液型が生まれる理由は一つではありません。主に、次のような仕組みが関係します。
- 遺伝子の変異:抗原を作る酵素やタンパク質の働きが変化し、通常とは異なる血液型が現れることがあります。
- 劣性遺伝の組み合わせ:両親から受け継いだ遺伝子の組み合わせによって、特定の抗原が発現しない場合があります。ボンベイ型はその代表例です。
- 染色体上の遺伝子の配置:cisAB型のように、AとBの性質を持つ遺伝子が同じ染色体上に存在することで、通常とは異なる遺伝パターンが生じます。
- 抗原の量や構造の違い:抗原が弱く発現するなど、一般的な検査で典型的な反応が得られない場合があります。
特に注意したいのは、珍しい血液型だからといって、必ずしも健康上の問題があるわけではないことです。cisAB型のように、通常の生活では症状がなく、献血や医療機関での血液型検査をきっかけに判明する型もあります。
血液型の亜型はどうやって見分ける?通常のABO式血液型検査では、赤血球にA抗原やB抗原があるかを調べる「オモテ検査」と、血清中の抗A抗体や抗B抗体などを確認する「ウラ検査」を組み合わせます。両方の結果が典型的な組み合わせと一致しない場合には、亜型などを考慮して詳しい検査を行います。
たとえば、cisAB型では抗A・抗Bに対する反応の強さが通常と異なる場合があります。ボンベイ型では、一般的なO型と異なり、H抗原の有無や抗H抗体の検査が判定に関わります。必要に応じて、特殊な試薬を使った血清学的検査や遺伝子検査などが行われます。
血液型検査の結果に食い違いがあっても、それだけで家族関係を判断することはできません。cisAB型などの亜型や、検査方法の違いが関係している可能性もあります。親子関係の確認が必要な場合には、血液型だけで結論を出さず、適切な遺伝学的検査を利用が必要です。
【輸血の適合性と2026年の対策】日本赤十字社の献血登録制度
珍しい血液型が医療上の課題になる最大の理由は、輸血に必要な血液を確保しにくいことです。輸血ではABO式血液型とRh式血液型の適合性が重要ですが、それ以外にも多くの赤血球抗原があります。患者が特定の抗原に対する抗体を持っている場合には、通常の血液型が一致していても、別の条件を満たす血液製剤が必要になることがあります。
輸血前には、血液型検査に加えて、不規則抗体検査や交差適合試験などを行い、患者と輸血用血液の適合性を確認します。珍しい血液型や特定の抗体がある患者では、一般的な在庫から適合血を確保できない場合もあり、専門的な検査や血液センターとの連携が必要です。
日本赤十字社の凍結保存と献血登録日本赤十字社は、まれな血液型の血液を必要とする患者に備え、適合する血液の確保に取り組んでいます。兵庫県赤十字血液センターなどの公表資料によると、まれな血液型の血液はマイナス80度以下で凍結保存され、国の基準に基づく保存期間は10年間です。必要になった際には、保存血を使用するほか、該当する血液型の献血者に協力を依頼します。
この仕組みは、一般的な献血の在庫だけでは対応しにくいケースに備えるためのものです。希少な血液型が判明した人に献血登録への協力を依頼し、必要なときに連絡できる体制を整えることが、患者の輸血機会を確保するうえで重要になります。
2026年度の献血推進計画で何が示された?厚生労働省が2026年2月27日に告示した「令和8年度の献血の推進に関する計画」では、まれな血液型を持つ患者への血液製剤の供給を確保するため、採血事業者が該当する人の意向を踏まえて登録を依頼することや、国がまれな血液型の血液の供給状況を調査することが示されています。
これは、珍しい血液型の人に一律に献血を求めるという意味ではありません。本人の意向を尊重しながら、医療上の必要に応じて適合血を確保するための仕組みです。
なお、Rh陰性の人についても、地域や医療需要によっては供給の調整が必要です。大阪府赤十字血液センターが公表した2022年度の大阪府内の実績では、医療機関への赤血球製剤の供給量に占めるRh陰性製剤の割合は約0.8%で、日本人に占めるRh陰性の割合である約0.5%を上回っていました。同センターは、献血者への協力依頼などによって供給を確保している状況を説明しています。
この事例からも、人口に占める割合だけでは輸血の難しさを判断できないことが分かります。患者数、医療需要、献血者の協力、保存血の在庫など、複数の要因が血液の供給に関わっています。
【プロの結論】珍しい血液型を知ったときに確認すべきこと
珍しい血液型について調べるときは、「何人に1人なのか」という数字だけでなく、医療上どのような意味があるのかまで確認することが大切です。特に、Rh陰性、cisAB型、ボンベイ型、D--型、Rh null型は、それぞれ珍しさの理由も輸血時の課題も異なります。
情報を見極める際には、次の3点を判断基準にしてください。
- 頻度の数字に調査対象が明記されているか:日本人全体、献血者、特定地域の住民など、母集団が違えば推定値も変わります。
- 「珍しい」と「輸血が難しい」を区別しているか:頻度が低くても検査や供給体制が整っている型と、特定の抗原を欠くため適合血の確保が難しい型は同じではありません。
- 公的機関や専門学会の説明に基づいているか:日本赤十字社、厚生労働省、日本輸血・細胞治療学会などの資料を確認すると、検査や輸血の仕組みを正確に理解できます。
自分の血液型が珍しいと分かった場合には、まず医療機関や血液センターから説明を受け、正式な判定内容を確認してください。特別な血液型が判明した人にとっては、検査結果を適切に把握し、必要に応じて献血登録や医療情報の共有について相談しておくことが、将来の輸血に備えるうえで役立ちます。
【珍しい血液型】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本人で最も珍しい血液型は何ですか?
A1:日本人で最も珍しい血液型を一つに決めることは簡単ではありません。ボンベイ型、D--型、Rh null型などは極めてまれですが、国内の正確な頻度を同じ基準で比較できる公開統計は限られています。珍しさだけでなく、輸血時の適合性も判断基準になります。
Q2:日本人のRhマイナスは何人に1人ですか?
A2:日本赤十字社の公開情報では、約200人に1人、割合にして約0.5%です。AB型かつRhマイナスの場合は、約2,000人に1人が目安とされています。いずれも集団全体の概算であり、個人の血液型を推測できる数字ではありません。
Q3:ボンベイ型とO型は同じですか?
A3:同じではありません。ボンベイ型ではH抗原が赤血球に発現せず、通常のO型とは抗原の構造が異なります。抗H抗体を持つことがあるため、通常のO型の赤血球が適合するとは限らず、専門的な検査と輸血用血液の選定が必要です。
Q4:cisAB型は親から子どもに遺伝しますか?
A4:はい。cisAB型はABO式血液型に関係する遺伝子の組み合わせによって生じ、親から子どもへ受け継がれる可能性があります。通常のAB型とは遺伝の仕組みが異なるため、家族の血液型が一般的な遺伝の説明に当てはまらない場合でも、血液型だけで親子関係を判断することはできません。
Q5:珍しい血液型の人は必ず献血登録をしなければなりませんか?
A5:必ず登録しなければならないわけではありません。日本赤十字社は、まれな血液型の血液を必要とする患者に備えて献血登録への協力を依頼していますが、登録は本人の意向を踏まえて行われます。該当する可能性がある場合は、医療機関や血液センターに相談するとよいでしょう。
珍しい血液型は、単に人数が少ないというだけではありません。日本人のRhマイナスは約0.5%で、AB型かつRhマイナスは約2,000人に1人とされています。一方、ボンベイ型、cisAB型、D--型、Rh null型は、抗原の発現や遺伝子の仕組みがそれぞれ異なり、輸血に必要な血液を確保するうえで特別な対応が必要になることがあります。
2026年には、厚生労働省の献血推進計画でも、まれな血液型の血液の確保と供給状況の調査が位置付けられています。日本赤十字社による凍結保存や献血登録は、必要な患者に適合する血液を届けるための重要な仕組みです。
血液型の希少性を正しく理解するには、出現頻度の数字だけで順位を付けるのではなく、抗原の特徴、遺伝の仕組み、検査の方法、輸血時の適合性を総合的に見ることが欠かせません。公的機関や専門学会の情報を基に理解を深めることが、自分や家族が医療を受ける際の適切な備えにつながります。