JRAの調教師定年は70歳。2026年は3月3日付で国枝栄、小西一男、佐々木晶三、土田稔、西園正都、根本康広、南田美知雄の7人が定年引退した。アーモンドアイやアパパネ、キズナなどを育てた調教師たちが厩舎を離れ、管理馬は翌4日付で新たな厩舎へと引き継がれた。
ただし、調教師の引退日は70歳の誕生日に一律で設定されるわけではない。JRAの免許制度と競馬開催の日程が関係するため、2026年の引退日が3月3日になったことにも明確な理由がある。加えて、定年後も競馬の現場で働く道は残されており、国枝栄元調教師の再就職は、その可能性を示す事例となった。
【まず結論】JRA調教師の定年は70歳、引退日は誕生日と異なる

JRAの調教師定年制度は、1988年2月に決定された70歳定年制に基づく。JRA公式の沿革にも、この制度の導入が記録されている。
ここで押さえておきたいのは、定年年齢と実際の引退日を分けて考えることだ。調教師は免許を受けて厩舎を運営し、競走馬の管理や出走に関する業務を担う。そのため、引退時期は単純に誕生日だけで決まるのではなく、免許の有効期間と競馬開催の運用に沿って取り扱われる。
2026年に引退した7人も、70歳の誕生日にそれぞれ引退したわけではない。1955年生まれの調教師に加え、1956年1月生まれの調教師も対象となり、3月3日付で一斉に引退した。
また、この70歳定年制はJRAの調教師に関する制度だ。地方競馬を含む競馬界全体に、同一の年齢制限がそのまま適用されると考えるのは正確ではない。地方競馬について調べる場合は、それぞれの主催者の免許制度や規程を確認する必要がある。
「調教師定年はいつなのか」と疑問に思ったら、まず70歳という年齢を確認し、次にJRAが発表する引退日を確認する。この順序で調べれば、誕生日と引退日のずれを誤解せずに済む。
【2026年引退調教師一覧】3月3日に退いた7人の実績
JRAは2026年2月10日、定年により引退する調教師7人を公表した。美浦所属が5人、栗東所属が2人で、いずれも3月3日付の引退となった。
JRAの「2026年 引退調教師紹介」に掲載された通算成績と主な管理馬を整理すると、7人が中央競馬に残してきた実績が見えてくる。以下の勝利数は、同ページに掲載されたJRA通算成績に基づく。
| 調教師名 | 所属 | JRA通算勝利 | 主な管理馬・実績 |
|---|---|---|---|
| 国枝栄 | 美浦 | 1,123勝 | アーモンドアイ、アパパネ、ブラックホーク |
| 小西一男 | 美浦 | 537勝 | ペイシャエス、ゴーゴーナカヤマ |
| 佐々木晶三 | 栗東 | 680勝 | キズナ、タップダンスシチー、アーネストリー |
| 土田稔 | 美浦 | 386勝 | ハイランドピーク、タイキシャーロック |
| 西園正都 | 栗東 | 749勝 | ジュールポレール、サダムパテック |
| 根本康広 | 美浦 | 218勝 | 騎手・調教師の双方で競馬界を支えた |
| 南田美知雄 | 美浦 | 210勝 | サペラヴィ、カッツミー |
※成績はJRA公式の引退調教師紹介に掲載された数値。地方競馬などの成績は含まない。
国枝栄:アーモンドアイとアパパネを育てた名伯楽国枝栄調教師は、2026年の定年引退者のなかでも特に大きな注目を集めた人物だ。JRA公式プロフィールによると、1989年に調教師免許を取得し、1990年に初出走。通算1,123勝、JRA重賞70勝を記録した。
代表的な管理馬は、2010年に牝馬三冠を達成したアパパネと、2018年に牝馬三冠を達成したアーモンドアイ。後者はジャパンカップなどを制し、JRA・GⅠで8勝を挙げた。ブラックホークもスプリンターズステークスなどのGⅠを制している。
国枝調教師はJRA公式の引退コメントで、長いようであっという間だったと振り返り、日本競馬の今後への期待も口にした。積み重ねた実績だけでなく、競馬界の将来を見据えた言葉も、長年現場に立ってきた調教師の節目を感じさせた。
小西一男:70年間を中山競馬場とともに歩んだ調教師小西一男調教師は、JRA通算537勝、重賞8勝。主な管理馬にはペイシャエスやゴーゴーナカヤマがいる。
JRAの引退コメントでは、子どもの頃から中山競馬場が遊び場で、騎手時代も調教師時代も競馬場で過ごしてきたと振り返った。引退後については、一ファンとして競馬を応援していく意向を示している。競馬の現場で働く側から、レースを見守る側へ移るという節目が表れたコメントだった。
佐々木晶三:キズナやタップダンスシチーを管理栗東所属の佐々木晶三調教師は、通算680勝、重賞53勝。キズナの2013年日本ダービー制覇や、タップダンスシチーのジャパンカップ制覇などで知られる。
JRAの引退コメントでは、キズナを思い出に残る馬として挙げたほか、タップダンスシチーやアーネストリーで宝塚記念を勝った経験にも触れた。中央競馬の全10競馬場で重賞勝利を挙げたことも、自身の歩みを振り返るうえで印象深い実績として語っている。
土田稔・西園正都・根本康広・南田美知雄土田稔調教師は通算386勝、重賞4勝。ハイランドピークやタイキシャーロックなどを管理した。JRAの引退コメントでは、楽しい調教師生活だったと振り返り、支えてくれた関係者やファンへの感謝を伝えている。
西園正都調教師は通算749勝、重賞32勝。ジュールポレールやサダムパテックなどを管理した。騎手として24年、調教師として29年にわたり活動した経歴を持ち、引退時には長年携わってきた仕事への思いを語った。息子の西園翔太調教師に夢を託すという趣旨のコメントも残している。
根本康広調教師は通算218勝。騎手としても活動した経験を持ち、JRAの引退コメントでは、周囲との出会いや弟子の成長を振り返り、幸せな騎手・調教師人生だったと述べた。
南田美知雄調教師は通算210勝、重賞3勝。サペラヴィやカッツミーなどを管理した。自身が競馬界に入った頃から現在までの変化を振り返り、引退後も競馬界を温かく見守っていく考えを示している。
7人の引退は、単に厩舎の責任者が交代するだけの出来事ではない。管理馬の状態や調教方針、関係者との連携など、厩舎が担ってきた仕事を新しい管理体制へ引き継ぐ必要がある。定年制度は個人の節目であると同時に、競馬運営全体に関わる制度でもある。
【なぜ3月3日?】調教師の引退日が決まる仕組み
2026年の調教師定年引退日が3月3日になった理由は、JRAの免許有効期間の取り扱いにある。
JRAは2026年2月10日の発表で、引退する7人の調教師免許の有効期間について、競馬施行規程第50条第2項に基づき、2026年3月3日まで延長すると説明した。もともとの免許満了期は2月末だったが、2026年の2月末は土曜日だったため、規程に沿って最初の火曜日まで延長された。
この取り扱いには、出走馬の管理調教師が出馬投票日と開催日で異なる状態になることを避けるという実務上の意味がある。競走馬の出走準備と免許の有効期間を整合させ、競馬開催を円滑に進めるための仕組みだ。
日程を整理すると、次のようになる。
- 2026年2月10日:JRAが調教師7人の定年引退を公表。
- 2026年2月末:本来の免許満了期。
- 2026年3月3日(火曜):規程に基づき免許の有効期間を延長したうえで引退。
- 2026年3月4日(水曜):引退調教師が管理していた競走馬を新たな厩舎へ転厩。
JRAの「引退調教師の管理馬の転厩」によると、国枝厩舎の51頭、小西厩舎の28頭、土田厩舎の17頭、根本厩舎の25頭、南田厩舎の20頭、佐々木厩舎の24頭、西園厩舎の36頭が、3月4日付で転厩対象となった。合計は201頭に上る。
つまり、「調教師の引退日はいつか」という問いに対して、毎年必ず3月3日と答えることはできない。2026年は2月末の曜日と免許延長の規程が重なった結果であり、翌年以降の日付も、その年の公式発表で確認する必要がある。
【定年後の進路】国枝栄の再就職が示す例外的な働き方
調教師が定年を迎えた場合、JRAの調教師免許に基づいて厩舎を運営する立場は終わる。しかし、引退後に競馬との関わりをすべて断たなければならないわけではない。
2026年は国枝栄元調教師の進路が大きな話題になった。4月3日の競馬報道によると、国枝氏は定年引退後、美浦の小島茂之厩舎で臨時補充員、通称「ヘルパー」として働くことになった。欠員が生じた厩舎でスタッフとして勤務し、馬の世話や調教に携わる立場だ。
これは調教師免許を維持したまま厩舎を運営するという意味ではない。調教師としての役割を終えた後、別の厩舎のスタッフとして雇用され、馬と直接関わる仕事に移ったということだ。報道では、定年後に厩舎従業員へ転身するのはJRAでは前例のないケースと紹介された。
加えて、10月3日の東スポ競馬などの報道によると、国枝氏はテレビ東京系「ウイニング競馬」に出演し、10月14日から奥村武厩舎で再びヘルパーとして働く意向を明らかにした。奥村調教師は、かつて国枝厩舎で調教助手を務めていた人物だ。
この事例から見えるのは、調教師の定年は「競馬界で働けなくなる年齢」ではなく、「調教師として厩舎を運営する立場を終える節目」だという点である。定年後の働き方は、本人の希望だけで決まるわけではない。受け入れ先の人員状況、必要とされる役割、雇用条件などが関わる。
ほかにも、引退した調教師が経験や知識を生かし、競馬に関する助言などに携わる道はある。例えば、2022年に定年引退した藤沢和雄氏は、JRAとアドバイザリー契約を結んだ。これは国枝氏の厩舎スタッフへの転身とは異なる形だが、現場経験を引退後も生かす事例として参考になる。
ただし、こうした進路がすべての元調教師に用意されているわけではない。再就職やアドバイザー就任は個別の契約や条件によるもので、定年後の継続雇用が自動的に保証される制度ではない。
【2027年の調教師定年】引退者は何人?今後の確認ポイント
2027年の調教師定年についても、早い段階から関心が集まっている。日刊スポーツは2025年12月、2027年には定年により4人が引退する見込みだと報じた。東西の厩舎から2人ずつという見通しも伝えている。
ただし、報道段階の見込みとJRAの正式発表は区別しておきたい。2026年10月28日時点で、2027年の定年引退者を確定一覧として扱うには、JRAによる対象者と引退日の発表を確認する必要がある。
調教師の引退予定を追う場合は、次の3点を見ておくと情報を整理しやすい。
- 生年月日:70歳定年制の対象時期を考える手がかりになる。
- JRAの引退発表:定年による引退なのか、別の理由による引退なのかを確認できる。
- 免許満了日と転厩発表:実際の引退日や、管理馬がいつ新しい厩舎へ移るかを確認できる。
生年月日だけから引退日を断定するのは避けたい。2026年の例が示すように、免許の有効期間や曜日に応じた延長規程が実際の日程に影響するからだ。
また、調教師の引退人数は、新規調教師の開業や厩舎の再編とも関係する。2025年12月の日刊スポーツ報道では、2026年度の新規調教師免許試験の合格者数は4人だったことも紹介された。ただし、引退人数と新規合格者数が毎年必ず一致するわけではなく、厩舎の運営体制や馬房数など複数の事情が関係する。
2027年の定年引退を調べる際は、予測記事だけでなく、JRAの発表と新規調教師の開業情報をあわせて見ることで、競馬界の世代交代をより正確に把握できる。
【プロの結論】調教師定年を理解するための3つの視点
調教師定年をめぐる情報を読み解くうえで、押さえておきたい視点は3つある。
第一に、70歳という年齢だけで引退日を決めつけないこと。JRAの70歳定年制は基本となるルールだが、実際の引退日は免許の有効期間や競馬開催に関する規程に基づく。2026年3月3日は、すべての年に共通する固定日ではない。
第二に、調教師の引退と競走馬の引退を混同しないこと。調教師が定年で厩舎を離れても、管理していた競走馬が同時に競走生活を終えるとは限らない。2026年は、引退した7人の管理馬が3月4日付で転厩した。馬の今後を知りたい場合は、転厩先と次走の情報を追う必要がある。
第三に、定年後の進路は個別の事例として見ること。国枝栄元調教師のヘルパー転身は、調教師としての免許を失った後も、馬と関わる仕事を続けられる可能性を示した。ただし、これは通常の調教師免許が延長された事例ではなく、別の職務への転身である。誰もが同じ道を選べると考えるのは正確ではない。
定年制度は、ベテランの経験をいつまで競馬の現場に生かせるかという問題と、厩舎の世代交代をどう進めるかという問題の両方に関わる。今後の議論では、年齢制限そのものだけでなく、引退後の人材活用や厩舎スタッフの確保も注目点になりそうだ。
【調教師定年】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:JRAの調教師定年は何歳ですか?
A1:JRAの調教師には70歳定年制がある。ただし、実際の引退日は誕生日そのものではなく、免許の有効期間や関連規程に基づいて決まる。
Q2:なぜ2026年の調教師引退日は3月3日だったのですか?
A2:2026年2月末が土曜日だったため、JRAの競馬施行規程第50条第2項に基づいて免許の有効期間が最初の火曜日である3月3日まで延長されたため。管理馬は翌4日付で転厩した。
Q3:調教師は定年後も競馬の仕事を続けられますか?
A3:別の立場で競馬に携わることは可能だ。国枝栄元調教師は2026年の定年引退後、厩舎の臨時補充員として働く道を選んだ。ただし、調教師として厩舎を運営することと、厩舎スタッフなどとして働くことは別であり、再就職が一律に保証されるわけではない。
JRAの調教師定年は70歳。2026年3月3日には国枝栄、小西一男、佐々木晶三、土田稔、西園正都、根本康広、南田美知雄の7人が引退し、管理馬201頭が翌4日付で転厩した。
引退日が3月3日になったのは、2月末の曜日と免許有効期間の延長規程が関係している。定年は年齢だけで判断できるものではなく、正式な引退発表と転厩情報を確認することが大切だ。
また、国枝栄元調教師の再就職は、調教師としてのキャリアを終えた後も、別の立場で馬と関わり続けられる可能性を示した。2027年の定年引退についても、報道上の見込みとJRAの正式発表を区別して追う必要がある。
調教師定年を理解する際は、「70歳という年齢」「免許の有効期間」「引退後の進路」の3点を押さえたい。制度の仕組みと個々の調教師の歩みをあわせて見ることで、競馬界の世代交代と、その先にある人材活用の課題が見えてくる。