大相撲の千秋楽、優勝争いの行方とともに注目したいのが、結びの三番を前に行われる「三役揃い踏み」です。東西の力士が土俵に上がり、三角形の陣形で四股を踏む姿は、本場所の終盤を彩る伝統的な儀式として知られています。しかし、「三役相撲」「これより三役」「役相撲」は、それぞれ何を意味するのでしょうか。
日本相撲協会の公式解説によると、「これより三役」とは、千秋楽の結びの一番を含む最後の三番を指し、その取組は「役相撲」とも呼ばれます。加えて、最初の勝者には矢、二番目の勝者には弦が贈られ、結びの一番の弓は弓取力士が受け取ります。2026年の最新事情も踏まえ、大関・関脇・小結の違い、横綱が三役に含まれない理由、儀式の由来まで整理します。
【基本解説】三役相撲とは?「これより三役」と「役相撲」の意味

「三役相撲」という言葉を理解するには、まず番付上の三役と、千秋楽の最後を飾る儀式・取組を区別する必要があります。一般に三役とは大関・関脇・小結を指します。一方、「これより三役」は千秋楽の最後の三番に関する呼び名であり、「役相撲」はその三番の取組を指します。
日本相撲協会公式サイトの「大相撲クイズ」でも、「これより三役」を優勝決定戦や横綱同士の対戦と混同しないよう、結びを含む残り三番であることが解説されています。つまり、優勝決定戦そのものでも、特定の番付同士の対戦だけを意味する言葉でもありません。
それぞれの用語を整理すると、次のようになります。
- 三役:通常は大関・関脇・小結という番付上の地位の総称。
- これより三役:千秋楽の結びの一番を含む最後の三番に入ることを示す呼び名。
- 役相撲:千秋楽の最後の三番の取組。
- 三役揃い踏み:最後の三番を前に、東西それぞれ三人の力士が土俵上で四股を踏む儀式。
なお、これらの言葉は関連していますが、同じ意味ではありません。「三役」は番付上の地位、「これより三役」は千秋楽の進行に関する呼び名、「三役揃い踏み」は取組前の所作を指します。この違いを押さえるだけで、相撲中継の解説が理解しやすくなります。
【儀式の仕組み】三役揃い踏みはなぜ行われる?四股と「扇の要」の意味
三役揃い踏みは、本場所の千秋楽に、結びの三番を控えた力士たちが東西それぞれ三人ずつ土俵に上がって行う儀式です。日本相撲協会の観戦ガイドでも、千秋楽ならではの見どころとして紹介されています。
特徴的なのは、三人が横一列に並ぶのではなく、三角形の陣形をつくって四股を踏むことです。東方の三人は、正面から見て前に二人、後ろに一人。続いて西方の三人は、前に一人、後ろに二人という配置になります。
この三角形の頂点に立つ力士には「扇の要」という呼び名があります。日本相撲協会の公式解説でも取り上げられている用語で、扇を支える要のように、陣形の頂点に位置する力士を表しています。
三役揃い踏みの基本的な流れは次のとおりです。
- 東方の三人が土俵に上がる。正面に向かって前二人、後ろ一人の三角形をつくり、そろって四股を踏みます。
- 西方の三人が続く。前一人、後ろ二人の三角形となり、同じように四股を踏みます。
- 最後の三番が始まる。三役揃い踏みのあと、役相撲が順番に行われます。
- 結びの一番が終わる。一日の取組の締めくくりとして弓取式が行われます。
ここで覚えておきたいのは、三役揃い踏みに参加する六人が、必ずしも番付上の大関・関脇・小結だけで構成されるわけではないという点です。横綱が参加することもあります。儀式の名称に「三役」とあるからといって、番付上の三役だけが登場する仕組みではありません。
また、三役揃い踏みは、単なる演出や記念撮影のようなものでもありません。千秋楽の最後の三番へ観客の意識を向け、取組と取組の間に伝統的な所作を挟むことで、土俵の緊張感を高める役割を果たしています。
【番付を比較】大関・関脇・小結の違いと横綱が三役に含まれない理由
三役という言葉で最も誤解されやすいのが、横綱との関係です。大相撲の番付では横綱が最上位に位置しますが、通常の用語としての三役は大関・関脇・小結の三つです。横綱はその上位にある別格の地位として扱われます。
日本相撲協会の公式解説では、明治42年(1909年)に横綱が正式に最高位となるまで、大関が最高位でした。その時代には小結以上を三役として捉える考え方がありましたが、現在は横綱を三役とは別格に扱うのが基本です。
ただし、制度上の待遇などでは、さらに細かな使い分けがあります。同協会の解説によると、待遇面では大関を除き、関脇・小結のみを「三役」とする場合もあります。用語の範囲は、番付の説明なのか、待遇や制度の説明なのかによって確認する必要があります。
| 地位・用語 | 番付上の位置 | 特徴と三役との関係 |
|---|---|---|
| 横綱 | 最高位 | 三役とは原則別格。横綱に昇進すると、成績不振を理由に大関以下へ降格する制度ではなく、現役を続けられなくなれば引退を選ぶことになります。 |
| 大関 | 横綱の次 | 通常の意味で三役に含まれる。関脇以下とは昇進・降格や待遇面の制度が異なります。 |
| 関脇 | 大関の次 | 通常の意味で三役に含まれる。大関昇進を目指す重要な地位です。 |
| 小結 | 関脇の次 | 通常の意味で三役に含まれる。三役の中では最も下の地位で、前頭から昇進する目標の一つです。 |
| 前頭 | 小結の下 | 幕内力士のうち、横綱・大関・関脇・小結以外の地位です。 |
この表から分かるように、三役は横綱を含む四段階の総称ではありません。基本的には大関・関脇・小結の三地位を指します。ただし、待遇上の「三役」は関脇・小結を指す場合があるため、資料を読む際には定義を確認することが大切です。
また、横綱が三役揃い踏みに参加することと、横綱が番付上の三役に含まれることは別問題です。儀式の参加者は最後の三番に出場する力士を中心に構成されるため、横綱が登場しても、三役という番付用語の定義が変わるわけではありません。
【勝者への贈り物】矢・弦・弓の意味と、弓取力士が受け取る理由
「これより三役」の見どころは、取組だけではありません。勝者に贈られる矢・弦・弓にも、相撲興行の歴史が残されています。日本相撲協会の公式解説では、これらは昔、武家時代に弓や矢などが懸賞として渡されていた名残と説明されています。
現在の役相撲では、勝った順番によって贈られる品物が異なります。最初の取組の勝者には矢、二番目の取組の勝者には弦、結びの一番では弓が対応します。ただし、結びの一番の勝者本人が弓を受け取るのではなく、後に行われる弓取式の力士が代わりに受け取ります。
- 矢:最後の三番のうち、最初の取組に勝った力士に贈られます。
- 弦:二番目の取組に勝った力士に贈られます。
- 弓:結びの一番に対応する品物です。実際には弓取式を行う力士が受け取ります。
ここで注意したいのは、矢・弦・弓が、現在の番付上の順位を直接示しているわけではないことです。贈り物の違いは最後の三番の順番に対応しており、勝者の地位によって自動的に決まる仕組みではありません。
なぜ、勝者に現金ではなく弓や矢などを贈るのでしょうか。日本相撲協会の説明によると、相撲では古くから、勝者に品物を贈る懸賞の習慣がありました。平安時代の相撲節会では米や布地などが贈られ、時代によっては酒や食料品なども懸賞として用いられました。
昭和30年(1955年)には懸賞について一律1万円、または1万円以上の商品という基準が定められ、その後、現物による懸賞はほとんど姿を消したと同協会は解説しています。矢・弦・弓の習慣は、こうした懸賞の歴史を今に伝えるものです。
特に興味深いのが弓取式とのつながりです。結びの一番の勝者に対応する弓を弓取力士が受け取り、その弓を土俵上で振る所作が、一日の最後を締めくくります。最後の取組と弓取式は、別々の催しに見えても、伝統の上では結び付いているのです。
【歴史と由来】三役相撲はいつから?横綱制度と千秋楽の伝統
三役相撲の由来を理解するには、現在の番付制度が長い時間をかけて形成されてきたことを知る必要があります。とりわけ横綱の位置付けは、三役という言葉の意味を考えるうえで重要です。
日本相撲協会の解説によると、横綱は当初、強豪力士に与えられる称号として発展しました。明治23年(1890年)には番付に横綱の文字が登場し、明治42年(1909年)に正式に最高位として位置付けられました。それ以前は大関が最高位だったため、三役の範囲にも現在とは異なる歴史的背景があります。
この変化を踏まえると、三役の「三」は、横綱を含む上位四階級を意味するものではなく、大関・関脇・小結という三つの地位を表すと理解するのが基本です。横綱の制度が確立した後も、千秋楽の最後の三番や三役揃い踏みの伝統は受け継がれています。
一方、矢・弦・弓の由来は、昔の懸賞の習慣に結び付いています。現在のように金銭を中心とした懸賞が一般的になる以前は、勝者に品物を贈る文化がありました。千秋楽の最後の三番で異なる品物が用いられるのは、そうした古い興行の慣習が残っているためです。
三役揃い踏みや役相撲について、現在の形がいつ、誰によって一度に作られたのかを、単一の年や人物だけで説明するのは適切ではありません。番付の変化、横綱制度の確立、懸賞の習慣など、異なる歴史の流れが組み合わさって今日の姿につながっています。
伝統を理解する際には、番付制度の歴史と、儀式・懸賞の歴史を分けて考えることがポイントです。三役の範囲が変化してきたことと、矢・弦・弓が受け継がれてきたことは関連していますが、同じ出来事ではありません。
【2026年最新】三役相撲の現在と、観戦で押さえたいポイント
2026年現在も、三役揃い踏みは大相撲の本場所における千秋楽の伝統的な見どころです。日本相撲協会の観戦ガイドでは、千秋楽に結び三番を残して行われる儀式として紹介され、取組後の弓取式までを含めた終盤の流れが案内されています。
2026年11月場所の番付トピックスでは、関脇に藤ノ川と熱海富士、小結に美ノ海と義ノ富士が掲載されています。こうした顔ぶれは場所ごとの番付編成によって変わるため、特定の力士を三役の固定メンバーと考えるのではなく、その場所の番付を確認することが大切です。
また、千秋楽の三役揃い踏みで誰が土俵に上がるかは、番付上の三役だけで機械的に決まるものではありません。最後の三番の取組に登場する力士が儀式に参加し、横綱が加わる場合もあります。したがって、番付表と当日の取組表は、それぞれ異なる情報を示していると理解すると混乱しません。
観戦時には、次の三つを意識すると、儀式の意味がより分かりやすくなります。
- 最初に番付と取組を確認する:大関・関脇・小結という地位と、当日の最後の三番に出る力士を区別します。
- 三役揃い踏みの陣形を見る:東方と西方で三角形の向きが異なり、頂点に立つ力士は「扇の要」と呼ばれます。
- 三番の勝者と贈り物を追う:最初が矢、二番目が弦、結びが弓という順序を覚えると、取組後の所作まで楽しめます。
なお、観戦ガイドに掲載される進行時刻は目安であり、場所や当日の進行状況によって前後します。三役揃い踏みを現地で見たい場合は、開催場所の最新の観戦案内や当日の進行予定を確認しておくと安心です。
2026年の三役相撲を理解するうえで大切なのは、新しい儀式が始まったかどうかではなく、現在の番付制度のもとで伝統がどのように受け継がれているかという視点です。番付、最後の三番、儀式、懸賞の歴史をそれぞれ整理すれば、千秋楽の見どころをより深く味わえます。
【三役相撲】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:三役相撲とは、具体的にどの取組のことですか?
「三役相撲」は文脈によって使われ方が異なります。千秋楽の最後の三番を指す場合には、「これより三役」や「役相撲」という用語が関係します。番付上の三役は、通常、大関・関脇・小結の三地位です。
Q2:これより三役は、横綱同士の対戦や優勝決定戦のことですか?
いいえ。日本相撲協会の公式解説では、千秋楽の結びの一番を含む最後の三番を指します。横綱同士の対戦や優勝決定戦に限定された言葉ではありません。
Q3:三役揃い踏みには、必ず大関・関脇・小結だけが参加しますか?
必ずしもそうではありません。最後の三番を取る力士が参加するため、横綱が登場することもあります。儀式の名称と、番付上の三役の範囲を区別して考えるのがポイントです。
Q4:矢・弦・弓は、それぞれ何を意味していますか?
役相撲の勝者に贈られる品物です。最初の取組に勝った力士には矢、二番目には弦が贈られます。結びの一番に対応する弓は、弓取式を行う力士が勝者に代わって受け取ります。
Q5:三役の「三」には、横綱も含まれますか?
通常の番付用語では、三役は大関・関脇・小結を指し、横綱は別格です。ただし、待遇や制度の一部では大関を除く関脇・小結だけを三役と扱う場合もあります。
三役相撲を正しく理解するための要点は、三つあります。第一に、番付上の三役は通常、大関・関脇・小結を指すこと。第二に、「これより三役」は千秋楽の最後の三番、「役相撲」はその取組、「三役揃い踏み」は取組前の儀式を指すこと。第三に、矢・弦・弓は、昔の懸賞の習慣を今に伝える品物だということです。
横綱が三役揃い踏みに参加することはあっても、通常の番付用語で横綱が三役に含まれるわけではありません。また、矢・弦・弓の授与も、力士の地位ではなく最後の三番の順番に対応しています。この二つの違いは、特に誤解されやすいポイントです。
日本相撲協会の公式解説を基準に、番付制度の歴史と千秋楽の進行を切り分けて見ると、三役相撲という言葉の意味が明確になります。次に本場所を観戦するときは、三角形の陣形、扇の要、三番それぞれの勝者、そして最後の弓取式まで注目してみてください。取組の勝敗だけでは見えてこない、大相撲の伝統と興行文化の奥行きが感じられるはずです。