今回の火災では、被災した作業棟の損害に加え、長時間にわたる消火活動が必要になりました。
上田市消防委員会が2025年3月にまとめた資料によると、火災が発生した建物は3階建ての鉄骨造で、施設全体の延べ面積は20,180.21平方メートル。消防資料に記載された焼損面積は6,983.2平方メートルで、被害区分は「半焼」とされています。
一方、ホクトが2025年5月に発表した復旧計画では、収穫・出荷作業を行う作業棟の全部が焼失したと説明されています。6,983.2平方メートルという数値は両資料に登場しますが、消防資料では焼損面積、会社資料では作業棟の延べ面積として記載されている点に注意が必要です。
消火活動は10月30日も続き、翌31日午前9時37分に鎮圧、同日15時20分に鎮火しました。上田市消防委員会の報告では、消火活動への出動は消防本部・消防団・応援隊を合わせて延べ139台、541人です。また、上小生コン事業協同組合の協力により、コンクリートミキサー車18台が81回にわたって給水し、約445トンの水が運ばれました。
被害状況を整理すると、次のようになります。
- 火災による負傷者: なし
- 焼損面積: 6,983.2平方メートル(消防資料)
- 鎮圧: 2024年10月31日9時37分
- 鎮火: 2024年10月31日15時20分
- 消火活動に要した時間: 発生から約43時間
なお、2025年5月には再建工事中の作業員が転落して死亡する別の事故が報道されています。これは火災発生時の負傷者とは別の、復旧工事中に起きた事故です。
【再建の経緯】再発防止策と復旧計画を時系列で整理

火災後の対応は、原因の調査から再発防止、作業棟の再建、収穫・出荷の再開へと進みました。
ホクトが2025年5月23日に公表した資料では、同じ場所に代替の作業棟を新築する計画が示されました。建物の再建に加え、充電中のリチウムイオン電池が出火に関係した可能性を踏まえた運用上の対策も発表されています。
2024年10/29
火災発生
上田第一きのこセンターの作業棟で火災が発生。収穫・出荷工程の復旧が課題となる。
2024年10/31
鎮火
発生から約43時間後に鎮火。消防・警察などによる原因調査が進められる。
2025年5/23
原因に関する説明と再建計画
ホクトがリチウムイオン電池の暴発の可能性を公表。無人時間帯の充電を行わない対策と、代替建物の新築計画を発表。
2025年11月
ブナシメジの収穫量が通常水準に回復
11月28日の決算説明会で、会社側が上田工場の復旧と収穫量の回復を説明。
2026年5/15
2026年3月期決算を公表
火災損失1億1,900万円と、火災に係る確定保険金19億1,500万円を計上。
再発防止策としてホクトが公表したのは、人がいない時間帯には充電を行わないことを全センターで徹底するという運用ルールです。
これは上田第一きのこセンターだけに限定した対応ではありません。会社は全センターへの周知徹底を発表しており、設備事故の再発を防ぐため、工場全体の運用を見直す対応となっています。
ただし、公開された発表から確認できる具体策はこの充電ルールが中心です。追加の設備対策や個々のセンターにおける点検内容については、別途公表された資料と区別して捉える必要があります。
【2025年11月の再開】ブナシメジ供給への影響と2026年の稼働状況
上田第一きのこセンターの復旧を考えるうえで重要なのは、建物の完成時期だけでなく、実際にブナシメジの収穫量が戻ったかどうかです。
ホクトは2025年5月の発表で、収穫再開を同年11月上旬に予定していました。その後、2025年11月28日の決算説明会で、会社側は上田工場が同月に復旧し、収穫量が通常水準まで回復したと説明しています。
したがって、復旧計画上の予定だけでなく、2025年11月には収穫量が通常水準に戻ったという会社側の説明が確認できます。
ブナシメジの供給はどう変化したのか火災の影響は、施設の再建期間中にブナシメジの国内生産量・販売量が減少したことにも表れました。ホクトの2025年3月期の事業報告でも、上田第一きのこセンターの火災が生産量・販売量の減少要因として記載されています。
生産量が減れば、出荷先への供給にも影響します。会社側も2025年11月の決算説明会で、火災が起きた前年11月・12月にはブナシメジの供給量を落とし、取引先に影響が出たと説明しました。
その一方、2025年11月には通常の収穫量まで回復したと報告されています。これにより、少なくとも会社が説明した生産・供給面では、火災による影響は解消したと整理できます。
2026年10月現在、工場は稼働しているのかホクトの公式生産者情報には、上田第一きのこセンターが掲載され、栽培品目としてブナシメジが案内されています。2025年11月の収穫量回復に関する説明と合わせると、火災後の長期的な操業停止が続いていることを示す公開情報は確認できません。
また、ホクトが2025年5月に公表した復旧計画では、同センターの年間生産能力は3,000トンで、復旧後も変わらないとされていました。
ただし、年間生産能力は設備が持つ生産可能量であり、実際の年間生産量や稼働率とは異なります。2026年10月時点の毎日の生産量や、計画に対する稼働率までを示す具体的な数値は、ここで確認できる公開資料からは読み取れません。
【2026年決算を検証】火災損失1億1,900万円と保険金19億1,500万円
火災の影響を金額で見るときは、建物の再建費用、会計上の火災損失、保険金を分けて考える必要があります。
ホクトが公表した2026年3月期の連結決算資料では、上田第一きのこセンターの火災に関する復旧費用などとして、1億1,900万円の火災損失を特別損失に計上しています。同時に、同火災に係る確定保険金19億1,500万円を受取保険金として特別利益に計上しました。
前年度の2025年3月期には、火災損失として7億2,500万円が計上されていました。内訳には固定資産の滅失、棚卸資産の滅失、原状回復費用、操業休止期間中の固定費などが含まれます。
| 項目 | 金額・内容 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 2025年3月期の火災損失 | 7億2,500万円 | 資産の滅失や操業休止などの損失 |
| 2026年3月期の火災損失 | 1億1,900万円 | 当年度に計上した復旧費用など |
| 2026年3月期の受取保険金 | 19億1,500万円 | 火災に係る確定保険金を特別利益に計上 |
| 代替作業棟の設備投資計画 | 約36億円 | 2025年5月に公表された新築計画の投資額 |
| 上田第一きのこセンターの年間生産能力 | 3,000トン | 会社発表による復旧計画上の能力 |
ここで注意したいのは、火災損失と受取保険金の数字を単純に比較して、火災による経済的な影響がすべてなくなったと判断しないことです。両者は会計上、異なる項目として計上されています。また、代替建物の設備投資計画約36億円は、火災損失の計上額そのものではありません。
2026年3月期の決算から読み取れるのは、復旧に関する費用が引き続き計上された一方、保険金の受け取りも会計に反映されたということです。火災の経済的影響を評価する際には、復旧の進捗、生産量の回復、損失計上、保険金の受領を合わせて見る必要があります。
【プロの結論】上田市ホクト火災から読み取るべき3つのポイント
今回の火災を理解するうえで、特に重要なのは次の3点です。
1. 出火原因は「可能性が高い」という公表内容を基準に捉える
ホクトは消防当局から、充電中のリチウムイオン電池が暴発した可能性が高いとの説明を受けたと発表しました。火災直後の調査状況と、その後の会社発表を時系列で区別することで、原因に関する情報の変化を正確に理解できます。
2. 建物の復旧と生産の回復は別々に確認する
工場の再建が進んでも、設備の稼働や収穫量がすぐに元へ戻るとは限りません。今回は2025年11月に通常の収穫量まで回復したという会社側の説明があり、生産面の復旧を確認する材料になっています。
3. 決算上の損失と実際の供給影響を混同しない
火災損失の計上額が減っても、それだけで供給状況や工場の稼働状況が分かるわけではありません。反対に、収穫量が回復したとしても、火災に伴う復旧費用や保険金の会計処理がなくなるわけではありません。生産、復旧投資、損失、保険金をそれぞれ確認することが、企業への影響を評価するうえでの判断基準になります。
上田市ホクト火災は、電池の安全管理という現場の課題に加え、食品の安定供給と製造拠点の事業継続という観点からも教訓を残した事故です。
【上田市ホクト火災】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:上田市ホクト火災はいつ発生し、いつ鎮火しましたか?
2024年10月29日夜に発生し、10月31日15時20分に鎮火しました。上田市消防委員会の資料では、同日9時37分に鎮圧したと記録されています。
Q2:ホクト火災の出火原因はリチウムイオン電池で確定したのですか?
ホクトは2025年5月23日、消防当局から、作業場東側で充電中だったリチウムイオン電池が暴発した可能性が高いとの説明を受けたと公表しました。公表内容を正確に表すなら、「暴発した可能性が高い」という説明です。
Q3:火災による負傷者はいましたか?
上田市消防委員会の火災報告では、火災による負傷者はありませんでした。なお、2025年5月には再建工事中に作業員が死亡する別の事故が報道されていますが、これは火災当日の人的被害とは別です。
Q4:上田第一きのこセンターは2026年現在、復旧していますか?
ホクトは2025年11月、上田工場が復旧し、ブナシメジの収穫量が通常水準に回復したと説明しています。公式生産者情報にも同センターが掲載されています。一方、2026年10月時点の具体的な日別生産量や稼働率は、公開資料からは確認できません。
Q5:火災による損失は2026年決算でいくら計上されましたか?
2026年3月期には火災損失1億1,900万円が計上されました。また、火災に係る確定保険金19億1,500万円が特別利益に計上されています。前年度の火災損失は7億2,500万円でした。
上田市ホクト火災は、2024年10月29日に発生し、6,983.2平方メートルの焼損面積が記録された大規模な工場火災です。ホクトは2025年5月にリチウムイオン電池の暴発の可能性を公表し、無人時間帯の充電を禁止する対策と代替作業棟の建設計画を明らかにしました。
その後、2025年11月にはブナシメジの収穫量が通常水準まで回復したと会社側が説明しています。2026年3月期決算では火災損失と保険金の双方が計上され、復旧に伴う会計処理も確認できます。
今後、火災の影響を判断する際には、出火原因に関する公表内容、再発防止策の実施、生産量の回復、決算上の損失と保険金を分けて確認することが大切です。上田第一きのこセンターの復旧は、工場を再建するだけでなく、ブナシメジの安定供給と安全な生産体制を維持する取り組みとして捉える必要があります。