トラバサミとは、強いバネの力で金属製の部分を閉じ、動物の脚などを挟んで捕獲するわなです。野生動物だけでなく、散歩中の犬や屋外で暮らす猫、人が誤って踏み込んだ場合にも、深刻なけがにつながる危険があります。
日本では、2007年4月16日から狩猟におけるトラバサミの使用が禁止されています。ただし、鳥獣保護管理法に基づく例外的な捕獲許可まで一律に否定されているわけではありません。2026年10月時点の法制度を踏まえ、12センチメートルのサイズ規制、衝撃緩衝器具の要件、違反時の罰則、トラバサミを見つけたときの安全な対応まで整理します。
【トラバサミとは】仕組みと危険性を正しく理解する

トラバサミは、バネの力を利用して動物の体の一部を金属製の部分で挟み込む捕獲器具です。地面などに設置されたものに動物が触れると、仕掛けが作動して脚などを挟み込む構造になっています。
環境省や自治体の注意喚起では、トラバサミは動物に重大な損傷を与えるおそれがある危険なわなとして扱われています。見た目が小さくても、強いバネの力が集中するため、接触した際の危険性を軽視できません。
トラバサミが引き起こす被害- 骨や関節への損傷:挟まれた部位に強い圧力が加わり、骨折や関節の損傷につながるおそれがあります。
- 皮膚や組織の損傷:皮膚の裂傷、出血、筋肉などの損傷が生じる可能性があります。
- 長時間拘束される危険:発見されるまで逃げられず、痛みや出血に加えて、脱水や衰弱などの二次的な被害が生じることもあります。
- 人への危険:山林や農地、空き地などに設置されたわなに気づかず接触すると、けがをするおそれがあります。
とりわけ問題なのは、わなが捕獲対象を選別できないことです。設置した人が特定の野生動物を捕獲するつもりでも、犬、猫、対象外の野生動物などが誤って捕まる可能性があります。こうした「錯誤捕獲」による被害を防ぎ、捕獲された動物の損傷を軽減することが、使用規制の重要な背景です。
【法律の基本】トラバサミの使用禁止と例外的な許可
トラバサミの規制を理解するうえで重要なのが、「狩猟」と「許可を受けた捕獲」の違いです。両者を混同すると、使用禁止の範囲や許可の条件を誤って理解することになります。
環境省の「野生鳥獣の違法捕獲の防止」に関する資料によると、2007年4月16日から、錯誤捕獲の防止や捕獲された動物の損傷軽減などを目的として、狩猟におけるトラバサミの使用が禁止されました。
狩猟免許があっても自由には使えない狩猟免許や狩猟者登録を持っていることは、トラバサミを使用できる根拠にはなりません。一般的な狩猟のためにトラバサミを使うことは禁止されており、免許を持っているかどうかとは別に判断されます。
一方、農作物への被害などに対応するため、野生鳥獣の捕獲許可を申請する制度があります。鳥獣保護管理法第9条に基づく許可では、捕獲の目的や対象、場所、期間、方法などが審査されます。トラバサミについても、厳格な条件を満たした例外的な許可捕獲が認められる場合があります。
ただし、被害が発生していることだけを理由に、誰でも使用できるわけではありません。通常の捕獲方法では目的を達成できないなど、やむを得ない事情が求められ、安全確保や鳥獣保護の観点から許可されない場合もあります。
また、野生動物の捕獲許可と、犬や猫などの愛護動物を捕獲することは別の問題です。野生鳥獣の捕獲許可があっても、愛護動物を傷つける行為まで当然に認められるわけではありません。
【12センチ規制】トラバサミの使用許可条件を一覧で解説
例外的な捕獲許可を受けてトラバサミを使用する場合、器具の形状や寸法、安全対策について条件があります。環境省が示す基本指針や2017年10月6日付の通知では、次の要件が示されています。
| 確認項目 | 基準・条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 鋸歯の有無 | 鋸歯がないこと | のこぎり状の歯が付いたものは条件を満たしません。 |
| サイズ規制 | 開いた状態における内径の最大長が12センチメートル以下 | わな全体の外寸ではなく、開いた状態の内径の最大長が基準です。 |
| 衝撃緩衝器具 | 装着していること | 衝撃を和らげるための器具であり、使用許可そのものを意味するものではありません。 |
| 捕獲の必要性 | ほかの方法では目的を達成できないなど、やむを得ない事情があること | 器具の条件を満たすだけでは使用できません。 |
| 行政の許可 | 鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可が必要 | 対象、期間、区域、方法など、許可に付された条件を守る必要があります。 |
トラバサミのサイズ規制で注意したいのは、12センチメートル以下という条件が、単独で使用を認める基準ではないことです。鋸歯がないこと、衝撃緩衝器具が装着されていること、例外的な捕獲の必要性が認められることなど、複数の条件を満たす必要があります。
つまり、サイズが基準内でも、許可を受けずに使用すれば適法になるわけではありません。また、許可を受けた場合でも、指定された対象や場所、期間、使用方法などから外れれば、違反となる可能性があります。
衝撃緩衝器具があっても危険性は残る衝撃緩衝器具は、動物に加わる衝撃を軽減するための安全対策です。しかし、これを装着したトラバサミが無害になるわけではありません。動物が誤って捕獲される可能性や、けがをする危険性そのものがなくなるわけでもありません。
環境省の基本指針では、トラバサミを使用する捕獲許可について、鋸歯がないこと、開いた状態の内径の最大長が12センチメートルを超えないこと、衝撃緩衝器具を装着していることが基準として示されています。加えて、ほかの方法では目的を達成できないなどの事情が必要です。
【違法性と罰則】鳥獣保護管理法・動物愛護管理法の違い
トラバサミに関する法律は、主に野生鳥獣の捕獲を規制する鳥獣保護管理法と、犬や猫などの愛護動物を守る動物愛護管理法に分けて理解する必要があります。どちらの法律が問題になるかは、捕獲の対象や行為の内容によって異なります。
鳥獣保護管理法に違反した場合鳥獣保護管理法では、野生鳥獣の捕獲は原則として禁止されており、法律で認められた狩猟や許可捕獲などの例外に該当する必要があります。狩猟でのトラバサミの使用禁止に違反した場合や、許可を得ずに野生鳥獣を捕獲した場合などは、行為に応じて罰則の対象となります。
2026年10月時点の法令における主な罰則は、次のとおりです。
- 禁止された猟法などへの違反:鳥獣保護管理法第84条などにより、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる場合があります。
- 無許可で野生鳥獣を捕獲した場合:同法第83条により、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となる場合があります。
どの条文が適用されるかは、禁止された猟法を用いたのか、無許可捕獲に該当するのか、許可条件に違反したのかなどによって変わります。罰則の上限を、あらゆるトラバサミ関連行為に一律に当てはめることはできません。
なお、2025年6月1日から刑法などで拘禁刑が導入されており、2026年時点の法令を確認する際は、旧来の「懲役」という表記と区別する必要があります。
犬や猫を傷つけた場合は動物愛護管理法も問題になる動物愛護管理法第44条第1項は、愛護動物をみだりに殺し、または傷つけた行為について、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金を定めています。
環境省は2017年10月6日付の通知で、犬や猫などの愛護動物を捕獲する際、動物に著しい損傷を与えるトラバサミをあえて使用した場合、動物愛護管理法違反となる可能性が高いとの考えを示しました。
ただし、トラバサミが設置されていたという事実だけで、直ちに特定の犯罪が成立すると決まるわけではありません。設置の目的、動物への被害、行為の経緯などを踏まえた判断が必要です。野生鳥獣の捕獲に関する違反と、愛護動物への虐待・殺傷に関する違反が、別々に問題となる場合もあります。
【犬猫や人への被害】トラバサミを放置してはいけない理由
トラバサミの危険性は、狙った動物だけを捕獲できない点にあります。設置された場所が農地や山林であっても、周辺を通る犬や猫、人などが巻き込まれるおそれがあります。
大阪府は2025年4月3日更新の公式案内で、府内において違法に設置されたくくりわなや、使用が禁止されているトラバサミによる犬や猫の被害が発生していると注意喚起しました。同府は、犬の屋外での散歩時にはリードなどを装着し、猫は室内で飼育するよう呼びかけています。
犬や猫の被害を防ぐためにできること- 犬の散歩ではリードを使用し、草むらや見通しの悪い場所にむやみに入らないようにする。
- 猫は室内飼育を基本とし、屋外でわなに接触するリスクを減らす。
- 不審な金属製の器具やわならしきものを見つけても、確認のために近づいたり触ったりしない。
- ペットがわなに挟まれた場合は、無理に引き抜こうとせず、動物病院への連絡と安全確保を優先する。
人が立ち入りやすい通路や住宅地の近くに危険なわなが設置されている場合は、二次被害を防ぐことも重要です。子どもやほかの散歩中の動物が近づかないよう、安全な距離を保って注意を促し、警察や自治体に情報を伝えてください。
被害を受けた動物が見当たらなくても、わなが放置されている限り、別の動物が被害に遭う可能性は残ります。発見した段階で適切な窓口に通報することが、被害の拡大防止につながります。
【発見時の対処法】トラバサミの撤去と通報は誰に頼む?
トラバサミらしき器具を見つけた場合、最優先すべきことは、自分や周囲の人、動物が接触しないようにすることです。危険なわなは、見た目だけで作動状態や安全性を判断できません。
安全に対応するための手順- 1. 近づかず、触らない。踏んだり、持ち上げたり、バネを解除したりしないでください。手袋を着用しても安全が保証されるわけではありません。
- 2. 周囲の安全を確保する。安全な距離を保ち、ほかの人やペットが近づかないようにしてください。無理に立ち入りを制限しようとせず、自分の安全を優先します。
- 3. 場所を記録する。安全にできる場合は、近づかずに周囲の目印や位置情報、器具の見た目を記録してください。撮影のために危険な場所へ入る必要はありません。
- 4. 警察や自治体に通報する。人への差し迫った危険や犯罪のおそれがある場合は警察へ連絡し、自治体の鳥獣対策・自然環境担当部署にも情報を伝えてください。
- 5. 撤去は担当機関に任せる。器具の回収や安全確認は、状況を把握した関係機関に対応を依頼してください。
人がけがをした場合や、差し迫った危険がある場合は、必要に応じて119番で救急を要請し、警察への通報が必要な状況では110番を利用してください。人に危険が及ぶおそれのある不審なわなを見つけた場合も、警察に相談できます。
野生動物の捕獲を目的とするわなについては、市区町村の鳥獣対策担当部署や、都道府県の自然環境・鳥獣保護担当部署が相談窓口になります。自治体によって担当部署名や連絡先が異なるため、所在地を伝えて適切な窓口を確認するとスムーズです。
犬や猫が挟まれている場合は、無理に器具を外したり、動物を引っ張ったりしないでください。動物病院に連絡して救急対応について相談するとともに、警察や自治体にも状況を伝えましょう。出血が少なく見えても、骨や組織に損傷が生じている可能性があります。
危険なわなを発見した人が、自分で撤去しなければならないわけではありません。安全な距離から場所と状況を伝え、関係機関に対応を求めることが基本です。
【トラバサミとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:トラバサミは2026年現在、全面的に使用禁止ですか? A1:狩猟における使用は禁止されています。ただし、鳥獣保護管理法に基づく例外的な捕獲許可では、鋸歯がないこと、内径の最大長が12センチメートル以下であること、衝撃緩衝器具を装着していることなどの条件を満たしたうえで、使用が認められる場合があります。
Q2:12センチメートル以下のトラバサミなら、許可なしで使えますか? A2:使えません。12センチメートル以下という条件は、例外的な捕獲許可における要件の一つです。サイズ以外の器具要件や捕獲の必要性に加え、行政による許可が必要です。
Q3:トラバサミを見つけたら、自分で撤去してもよいですか? A3:自分で触ったり、解除したり、回収したりすることは避けてください。安全な距離から場所を記録し、警察や自治体の鳥獣対策担当部署に通報して、撤去や安全確認を依頼してください。
トラバサミは、強いバネの力で動物の脚などを挟む危険なわなです。日本では2007年4月16日から狩猟における使用が禁止されており、2026年時点でも、例外的な捕獲許可には器具の形状、12センチメートルのサイズ規制、衝撃緩衝器具の装着、捕獲の必要性など、厳格な条件が設けられています。
違反した場合は鳥獣保護管理法の罰則が適用される可能性があり、犬や猫などの愛護動物をみだりに殺傷した場合には、動物愛護管理法も問題になります。罰則は行為の内容や適用される条文によって異なります。
特に覚えておきたいのは、「12センチメートル以下なら自由に使える」「狩猟免許があれば使用できる」「見つけたら自分で外せばよい」という考え方はいずれも適切ではないということです。
トラバサミを見つけたときは、近づかず、触らず、警察や自治体に通報する。ペットが被害に遭ったときは、無理に外さず、動物病院と関係機関に連絡する。この基本を守ることが、人と動物の被害を防ぎ、危険なわなの適切な撤去につながります。