中国人の生活保護は実際にどの程度利用されているのか。2026年時点で公表されている厚生労働省の統計を見ると、2025年7月末現在、中国籍の世帯主が生活保護を受給している世帯は6,338世帯です。外国籍の世帯主がいる受給世帯全体に占める割合は約13.8%で、すべての生活保護受給世帯と比べると約0.39%に当たります。
ただし、この数字は中国国籍を持つ受給者個人の人数ではありません。「中国人の受給者が急増している」「外国人の生活保護は違法と最高裁が判断した」といった情報を正しく理解するには、統計の集計単位と制度の法的位置づけを分けて考える必要があります。厚生労働省の公表資料、国籍別の世帯数の推移、2014年の最高裁判決をもとに、2026年時点の実態を整理します。
【2026年最新】中国人の生活保護は何人?公表統計から実態を確認

2026年10月時点で確認できる国籍別の最新資料は、厚生労働省の「被保護者調査」における2025年7月末現在の年次調査速報値です。政府統計の総合窓口であるe-Statでも公表されており、世帯主の国籍別に受給世帯数を確認できます。
最新の集計では、中国籍の世帯主がいる生活保護受給世帯は6,338世帯。外国籍の世帯主がいる受給世帯全体は45,864世帯で、すべての受給世帯は1,622,998世帯でした。
この3つの数字を同じ時点で比較すると、次のようになります。
- 中国籍の世帯主がいる受給世帯:6,338世帯
- 外国籍の世帯主がいる受給世帯に占める割合:約13.8%
- すべての生活保護受給世帯に占める割合:約0.39%
ここで注意したいのは、「中国籍世帯」という表現の意味です。厚生労働省の統計で数えているのは、世帯主が中国籍である受給世帯です。その世帯に属する全員が中国籍とは限らず、日本人の配偶者や子どもが含まれる場合もあります。
逆に、日本人が世帯主である受給世帯に中国籍の配偶者や子どもが暮らしていても、この国籍別世帯数には計上されません。そのため、6,338世帯を「生活保護を受けている中国人の総数」と読み替えることはできません。
なお、2025年7月末の数字は速報値です。月次調査では受給世帯数や受給者数などが公表されますが、国籍別の内訳を同じ形式で毎月確認できるわけではありません。2026年の最新統計を調べる際は、集計対象の時点と公表時期を区別することが欠かせません。
【国籍別統計で比較】中国籍世帯の人数推移と外国籍世帯に占める割合
中国籍世帯の受給数は、過去数年間でどのように変化してきたのでしょうか。厚生労働省の被保護者調査に基づく国籍別の年次データを、毎年7月末という同じ基準で並べます。
| 調査時点 | 中国籍の世帯主がいる受給世帯 | 外国籍の世帯主がいる受給世帯全体 | 外国籍世帯に占める中国の割合 |
|---|---|---|---|
| 2018年7月末 | 5,405世帯 | 45,107世帯 | 約12.0% |
| 2019年7月末 | 5,496世帯 | 44,852世帯 | 約12.3% |
| 2020年7月末 | 5,744世帯 | 45,623世帯 | 約12.6% |
| 2021年7月末 | 5,980世帯 | 46,003世帯 | 約13.0% |
| 2022年7月末 | 6,133世帯 | 46,005世帯 | 約13.3% |
| 2023年7月末 | 6,188世帯 | 45,973世帯 | 約13.5% |
| 2024年7月末 | 6,269世帯 | 46,062世帯 | 約13.6% |
| 2025年7月末 | 6,338世帯 | 45,864世帯 | 約13.8% |
出典:厚生労働省「被保護者調査」年次調査の国籍別統計。2025年は速報値。割合は各年の中国籍世帯数を外国籍世帯主の受給世帯総数で割って算出した概数です。
この推移から分かるのは、中国籍の世帯主がいる受給世帯が一貫して増えている一方、外国籍の世帯主がいる受給世帯全体は、おおむね4万5,000~4万6,000世帯台で推移していることです。
2018年から2025年にかけて、中国籍世帯は5,405世帯から6,338世帯へと933世帯増えました。増加率は約17.3%です。外国籍世帯全体に占める割合も約12.0%から約13.8%へ上昇しています。
ただし、この数字だけで中国籍の人が生活保護を受ける確率が高くなったとは判断できません。中国籍の在留人口そのものの変化や、年齢構成、世帯構成、就労状況などを合わせて見なければ、受給のしやすさや受給率の変化は分からないためです。
また、ここで比較しているのは世帯数です。個人の受給者数の推移とは別の指標であり、両者を混同しないことが統計を読むうえでの基本になります。
【急増説の真相】中国人の生活保護は5年間で2倍になったのか
中国人の生活保護については、「受給者が5年間で2倍に増えた」という情報が話題になることがあります。この点について、厚生労働省が公表している「外国人の生活保護に関するよくあるご意見・ご質問」では、国籍別の世帯人員数を使った説明が示されています。
同資料によると、中国籍の世帯主がいる世帯に属する被保護人員数は、2018年度が9,059人、2023年度が9,471人でした。5年間で増えたのは412人で、増加率は約4.5%です。この統計から「5年間で2倍になった」とする主張は裏付けられません。
ただし、この9,471人も「生活保護を受けている中国人だけの人数」ではありません。中国籍の世帯主がいる世帯に属する被保護人員数であり、世帯員に日本国籍の人が含まれる可能性があります。国籍別の個人受給者数を直接示す数字として扱うことはできません。
また、2025年の最新の国籍別速報値で分かるのは、中国籍の世帯主がいる受給世帯が6,338世帯ということです。2026年時点で公表されている資料から、同じ時点の「中国国籍を持つ受給者個人の総数」をそのまま読み取ることはできません。
一方、「急増説は誤りだから、増加自体が起きていない」と考えるのも正確ではありません。世帯数は2018年以降、緩やかな増加傾向を示しています。重要なのは、実際に増えている指標と、根拠が確認できない極端な主張を切り分けることです。
外国籍世帯全体の状況についても、厚生労働省の月次調査では、世帯主が日本国籍を有しない世帯に属する被保護人員数は2012年度の74,736人から2024年度の64,993人へ減少しています。2024年度の数値は1か月平均であり、国籍別の中国籍世帯員数とは異なる集計ですが、外国籍世帯全体の受給者が一律に増え続けているという説明とも一致しません。
数字を検証する際は、少なくとも「何年の数字か」「世帯数か人数か」「世帯主の国籍か個人の国籍か」「どの集団を分母にしているか」の4点を確認する必要があります。
【最高裁判決を解説】外国人の生活保護は法律上認められているのか
外国人の生活保護をめぐる議論では、統計と並んで法的な位置づけも誤解されやすい論点です。日本では、外国人に対する生活保護の取扱いについて、生活保護法の適用と行政措置による保護を区別する必要があります。
生活保護法第1条・第2条に基づく保護の対象は日本国民であり、外国人は同法に基づく受給権を持たないというのが、2014年7月18日の最高裁判所第二小法廷判決で示された考え方です。
この判決は、永住資格を持つ外国人が大分市で生活保護を申請し、却下処分の取消しなどを求めた訴訟に関するものでした。最高裁は、生活保護法の「国民」には外国人が含まれないと判断し、生活保護法に基づく保護を受ける権利があるとは認めませんでした。
しかし、この判決を「最高裁が外国人への生活保護そのものを違法とした」と理解するのは誤りです。判決が否定したのは、外国人が生活保護法に基づく法的な受給権を持つという解釈です。従来の行政措置による取扱いを、判決によって一律に廃止したわけではありません。
実際、厚生省は1954年5月8日付の通知「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」を出し、一定の外国人について、日本国民に対する生活保護の決定・実施の取扱いに準じて必要な保護を行う仕組みを設けてきました。この通知に基づく取扱いは、2026年時点でも続いています。
つまり、外国人への生活保護は、法律によって日本国民と同じ受給権が保障されている制度ではありません。一方で、一定の在留資格を持つ外国人には、行政措置として生活保護に準じた保護が実施されています。
この違いは、単なる法律用語の問題ではありません。行政措置による保護は、生活保護法に基づく保護と同じ法的な権利として保障されているわけではなく、申請や不服申立てなどの法的な位置づけにも違いがあります。制度の存続や運用を議論する際には、法律上の権利と行政上の取扱いを分けて考えることが重要です。
【中国人の受給条件】永住者・定住者なら誰でも生活保護を受けられる?
中国籍であること自体が、生活保護を受けられる理由になるわけではありません。外国人への行政措置では、在留資格や生活状況などが確認され、生活保護制度に準じた取扱いの対象となるかどうかが判断されます。
厚生労働省の資料では、対象となる外国人の例として、次のような在留資格や身分が挙げられています。
- 永住者:日本での在留活動に制限がない在留資格。
- 定住者:法令上認められた定住者の在留資格を持つ人。
- 日本人の配偶者等・永住者の配偶者等:所定の在留資格を持つ人。
- 特別永住者:特別永住者の地位を持つ人。
- 認定難民など:個別の制度上の取扱いに基づき対象となる人。
一方、留学、技能実習、技術・人文知識・国際業務、特定技能などの在留資格については、厚生労働省の資料上、原則として生活保護法に準じた取扱いの対象外とされています。特定活動などには個別の事情によって判断されるケースもあるため、在留資格の名称だけで一律に判断できない場合もあります。
また、永住者や定住者などの対象となり得る在留資格を持っていても、受給が自動的に認められるわけではありません。生活保護制度の基本的な考え方に沿って、世帯の収入、資産、就労能力、年金などの他制度による給付を含め、最低限度の生活を維持できるかどうかが審査されます。
生活保護は、収入が少ないという理由だけで一定額が一律に支給される制度ではありません。世帯の状況に応じて最低生活費と収入を比較し、不足する場合に必要な保護を行う仕組みです。外国人に対する保護でも、資産や能力などを活用するという基本的な考え方は変わらず、外国人を日本人より優先する制度ではないと厚生労働省は説明しています。
したがって、「中国人なら誰でも受給できる」「永住者なら申請すれば必ず認められる」といった理解は正確ではありません。国籍だけではなく、在留資格、世帯の収入・資産、生活状況を含めた個別の判断が必要です。
【生活保護制度の仕組みと実態】外国人の割合を正しく読むポイント
外国籍世帯の生活保護をめぐる情報では、「生活保護受給世帯の3分の1が外国人」といった主張が広まることもあります。しかし、厚生労働省の公表資料では、2024年度の外国籍世帯主による受給世帯は月平均47,332世帯、すべての受給世帯は月平均1,650,674世帯でした。機械的に比較すると、外国籍世帯主の受給世帯が占める割合は約2.9%です。
同年度に、外国籍の世帯主がいる世帯に属する被保護人員数は64,993人、全被保護人員数は2,008,061人で、約3.2%に当たります。ただし、この人員数には日本国籍の家族が含まれる場合があるため、外国籍の受給者だけを抽出した人数ではありません。
この数値は2024年度の月平均です。一方、先に紹介した2025年7月末の45,864世帯は、特定の時点における年次調査の速報値です。調査時点や集計方法が異なる数字を、そのまま比較して増減を断定することは避けるべきです。
中国籍世帯の割合についても同様です。2025年7月末の約13.8%という数字は、外国籍の世帯主がいる受給世帯のうち、中国籍の世帯主がいる世帯が占める割合です。日本に住む中国籍の人全体のうち、何%が生活保護を受けているかを示す数字ではありません。
統計を見極める際には、次の3点が判断基準になります。
- 分子と分母が一致しているか:中国籍世帯を、外国籍世帯全体と比較しているのか、すべての受給世帯と比較しているのかを確認する。
- 世帯と個人を混同していないか:世帯主の国籍による統計を、外国籍の受給者個人の人数として扱っていないかを確認する。
- 同じ時点・同じ調査で比較しているか:月平均と7月末時点の数字、速報値と確定値を混ぜていないかを確認する。
これらを押さえれば、生活保護に関する数字を過大に見積もったり、反対に実際の増加傾向を見落としたりすることを防ぎやすくなります。
【中国人生活保護】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:中国人の生活保護受給者は2026年現在、何人ですか? A1:2026年時点で公表されている最新の国籍別年次速報値では、中国籍の世帯主がいる受給世帯は6,338世帯です。中国国籍を持つ受給者個人だけの最新総数とは異なります。個人に関する参考値として、厚生労働省は中国籍の世帯主がいる世帯の被保護人員数を2018年度9,059人、2023年度9,471人と公表していますが、これも中国籍の人だけを数えた数字ではありません。
Q2:中国人の生活保護受給者は5年間で2倍に増えたのですか? A2:厚生労働省の公表資料によると、2018年度から2023年度にかけて、中国籍の世帯主がいる世帯の被保護人員数は9,059人から9,471人へ増えました。増加は約4.5%であり、2倍にはなっていません。ただし、中国籍世帯の受給世帯数そのものは2018年以降、緩やかな増加傾向にあります。
Q3:外国人への生活保護は最高裁で違法と判断されたのですか? A3:2014年7月18日の最高裁判決は、外国人が生活保護法に基づく受給権を持つとは認めませんでした。しかし、外国人への保護そのものを一律に違法とした判決ではありません。1954年の厚生省通知に基づき、一定の在留資格を持つ外国人には行政措置として生活保護に準じた保護が行われています。
2026年時点で確認できる最新の国籍別年次速報値では、中国籍の世帯主がいる生活保護受給世帯は6,338世帯です。外国籍の世帯主がいる受給世帯全体の約13.8%、すべての受給世帯の約0.39%に当たります。
中国籍世帯の数は2018年以降、緩やかに増えています。一方、厚生労働省の資料では、中国籍の世帯主がいる世帯の被保護人員数が5年間で2倍になったという主張は裏付けられていません。世帯数と個人の人数を区別し、統計の集計方法を確認することが、実態を正しく把握する第一歩です。
制度面では、外国人は生活保護法に基づく保護の対象ではないものの、永住者や定住者など一定の在留資格を持つ人には、行政措置として生活保護に準じた保護が行われています。2014年の最高裁判決も、法律上の受給権と行政措置による保護を分けて理解する必要があります。
今後、外国人の生活保護をめぐる議論を検証する際は、国籍別の世帯数、世帯員数、全体に占める割合、在留資格、制度の法的根拠をそれぞれ確認が必要です。数字の一部だけを切り取るのではなく、厚生労働省の被保護者調査と公表資料を基準に、実態と主張を照らし合わせることが、制度を冷静に評価するための判断基準になります。