2021年12月31日に放送された「第72回NHK紅白歌合戦」は、NHKホールの改修工事に伴い、実に49年ぶりとなる東京国際フォーラム(ホールA)をメイン会場に開催された記念碑的な回でした。番組テーマに「Colorful〜カラフル〜」を掲げ、従来の「紅組司会」「白組司会」という呼称を撤廃して全員が「司会」として番組を進行するなど、時代の変革に即した演出の刷新が大きく話題を呼びました。
ネットカルチャーの台頭や配信プラットフォーム発のヒット曲が音楽シーンを席巻した2021年。当時のステージを振り返るにあたり、初出場歌手の熱演から記憶に残る特別企画、そして劇的な幕切れとなった勝敗結果まで、公式発表および放送記録に基づき詳細を総まとめします。
【司会と会場】大泉洋・川口春奈が牽引した「Colorful」な新体制

第72回NHK紅白歌合戦における最大の構造改革の一つが、司会進行のシステム変更でした。従来の「紅組司会」「白組司会」「総合司会」という役割分担が廃止され、俳優の大泉洋、女優の川口春奈、そしてNHKの和久田麻由子アナウンサーの3名が、全員対等な立場で「司会」を担当しました。
これはテーマである「Colorful〜カラフル〜」が示す通り、多様性を尊重し、赤と白の対立構造だけでなく「すべての色を認め合おう」というメッセージが込められたものでした。NHKホールの耐震改修工事に伴い、1972年(第23回)の東京宝塚劇場以来となる外部会場、有楽町の東京国際フォーラム・ホールAから生中継され、2年ぶりに有観客での生放送が実現した点も大きな節目となりました。
【初出場歌手の衝撃】まふまふ・藤井風・BiSHが刻んだ新時代
2021年の紅白歌合戦を象徴していたのが、ネットシーンやサブカルチャーを原点とするアーティストたちの鮮烈な初出場でした。なかでも放送直後から大きな反響を呼んだのが、動画配信サイトを中心に絶大な支持を集めていたマルチクリエイター・まふまふの出演です。テレビの歌番組への出演自体が極めて異例のなか、カンザキイオリ作詞・作曲のボーカロイド発メガヒット曲「命に嫌われている。」を魂のこもったハイトーンボイスで歌い上げ、ネットカルチャーが名実ともに国民的プラットフォームへ浸透した瞬間を決定づけました。
また、シンガーソングライターの藤井風は、岡山県の実家からの生中継という形で「きらり」を歌唱・演奏したのち、突如として東京国際フォーラムのステージに生登場するというサプライズ演出を敢行。さらに自身の代表曲「燃えよ」をピアノ弾き語りで披露し、番組後半のクライマックスを一気に引き寄せました。
「楽器を持たないパンクバンド」として熱狂的な支持を集め、2023年の解散を発表していたBiSHも悲願の初出場を果たしました。インディーズ時代からの代表曲「プロミスザスター」を力強く歌い上げ、生放送のステージに爪痕を残しました。このほか、Awesome City Club、上白石萌音、KAT-TUN、DISH//、平井大など、配信チャートやドラマタイアップで2021年を彩った顔ぶれが初出場を飾りました。
【全出場歌手一覧とタイムテーブル】第72回NHK紅白歌合戦の曲順
第72回紅白歌合戦の全出場歌手、歌唱曲、および登場順の公式記録を時系列で整理しました。前半は華やかなオープニングから白熱のポップスナンバーが続き、後半は特別企画とベテラン勢の重厚なパフォーマンスが交錯する構成となりました。
| 部 / 順序 | 組 | 歌手名 | 出場回数 | 歌唱曲 |
|---|---|---|---|---|
| 前半 1 | 白組 | 郷ひろみ | 34 | 2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン- |
| 前半 2 | 紅組 | DISH// | 初 | 猫 |
| 前半 3 | 白組 | 山内惠介 | 7 | 有楽町で逢いましょう |
| 前半 4 | 紅組 | 櫻坂46 | 2 | 流れ弾 |
| 前半 5 | 紅組 | Awesome City Club | 初 | 勿忘 |
| 前半 6 | 白組 | GENERATIONS | 3 | Make Me Better |
| 前半 7 | 紅組 | 日向坂46 | 3 | 君しか勝たん |
| 前半 8 | 白組 | 純烈 | 4 | 君がそばにいるから |
| 前半 9 | 白組 | SixTONES | 2 | マスカラ |
| 前半 10 | 紅組 | 天童よしみ | 26 | あんたの花道〜ブラバンSP〜 |
| 前半 11 | 白組 | KAT-TUN | 初 | Real Face #2 |
| 前半 12 | 紅組 | 上白石萌音 | 初 | 夜明けをくちずさめたら |
| 前半 13 | 白組 | King & Prince | 4 | 恋降る月夜に君想ふ |
| 前半 14 | 紅組 | milet | 2 | Fly High |
| 前半 15 | 白組 | まふまふ | 初 | 命に嫌われている。 |
| 前半 16 | 紅組 | 水森かおり | 19 | いい日旅立ち |
| 前半 17 | 白組 | Snow Man | 初 | D.D. |
| 後半 18 | 紅組 | AI | 4 | アルデバラン |
| 後半 19 | 白組 | 関ジャニ∞ | 10 | Re:LIVE |
| 後半 20 | 紅組 | BiSH | 初 | プロミスザスター |
| 後半 21 | 白組 | 三山ひろし | 7 | 浮世傘〜第5回 けん玉世界記録への道〜 |
| 後半 22 | 白組 | 平井大 | 初 | Stand by me, Stand by you. |
| 後半 23 | 特別企画 | ケツメイシ | 初 | ライフイズビューティフル |
| 後半 24 | 紅組 | Perfume | 14 | ポリリズム |
| 後半 25 | 紅組 | millennium parade × Belle (中村佳穂) | 初 | U |
| 後半 26 | 白組 | 宮本浩次 | 2 | 夜明けのうた |
| 後半 27 | 紅組 | 乃木坂46 | 7 | きっかけ |
| 後半 28 | 特別企画 | 細川たかし | 39 | 望郷じょんから / 北酒場 |
| 後半 29 | 紅組 | 坂本冬美 | 33 | 夜桜お七 |
| 後半 30 | 白組 | 藤井風 | 初 | きらり / 燃えよ |
| 後半 31 | 紅組 | YOASOBI | 2 | 群青 |
| 後半 32 | 白組 | 鈴木雅之 | 4 | め組のひと 2021紅白ver. |
| 後半 33 | 白組 | ゆず | 12 | 虹 |
| 後半 34 | 白組 | 星野源 | 7 | 不思議 |
| 後半 35 | 紅組 | あいみょん | 3 | 愛を知るまでは |
| 後半 36 | 白組 | BUMP OF CHICKEN | 2 | なないろ |
| 後半 37 | 特別企画 | さだまさし | 21 | 道化師のソネット |
| 後半 38 | 紅組 | 東京事変 | 2 | 緑酒 |
| 後半 39 | 紅組 | 薬師丸ひろ子 | 2 | Woman "Wの悲劇"より |
| 後半 40 | 紅組 | 石川さゆり | 44 | 津軽海峡・冬景色 |
| 後半 41 | 白組 | 氷川きよし | 22 | 歌は我が命 |
| 後半 42 | 白組 | 布袋寅泰 | 初 | さらば青春の光 <紅白SP> |
| 後半 43 | 白組(大トリ) | 福山雅治 | 14 | 道標 〜紅白2021ver.〜 |
| 後半 44 | 紅組(トリ) | MISIA | 6 | 明日へ 2021 |
【特別企画の熱狂】細川たかしの熱唱と松平健「マツケンサンバII」
歴代の紅白歌合戦と比較しても、第72回の特別企画は非常にバラエティに富んだ構成でした。日本を代表する演歌歌手・細川たかしは特別企画枠として紅白の舞台にカムバックし、「望郷じょんから」と「北酒場」のスペシャルメドレーを披露。圧倒的な声量と貫禄で会場の空気を一変させました。
さらに視聴者を沸かせたのが、松平健による「マツケンサンバII」のパフォーマンスです。東京五輪が開催された2021年の世相を明るく照らすような華やかなステージングを展開し、司会陣や出場歌手も一体となって踊るシーンは、同年のハイライトの一つとして語り継がれています。ゲーム音楽に焦点を当てた企画では「ドラゴンクエスト」「エヴァンゲリオン」「鬼滅の刃」のオーケストラ生演奏が行われるなど、カルチャーの裾野の広がりを証明する企画が目立ちました。
【トリ対決と勝敗結果】MISIAと福山雅治の熱演、そして紅組圧勝の結末
番組の締めくくりとなるトリ対決では、白組の大トリを福山雅治が務め、「道標 〜紅白2021ver.〜」を深みのある歌声で届けました。対する全出演者のラストを飾る紅組トリはMISIAが担い、「明日へ 2021」を歌唱。さらにステージ上には藤井風がピアノ伴奏としてサプライズ合流し、MISIAへ楽曲提供した「Higher Love」をセッションするという豪華なフィナーレが実現しました。
全歌唱終了後の最終審査では、視聴者投票および会場審査が集計され、紅組が219万8,640票、白組が97万6,786票というダブルスコア以上の圧倒的な差をつけ、紅組の2年連続勝利が確定しました。新時代の演出を取り入れながらも、歌の力で観客を圧倒した紅組の底力が数字に表れた結果となりました。
【プロの結論】第72回紅白が音楽シーンに与えた構造的インパクト
第72回NHK紅白歌合戦は、テレビメディアとインターネット音楽シーンの関係性が完全に逆転・融和した歴史的転換点として位置づけられます。かつては地上波テレビでの露出がヒットの絶対条件でしたが、2021年はYouTubeやサブスクリプション配信で圧倒的な数字を叩き出したアーティストをNHK側が熱望し、彼らに合わせた演出や環境を用意して出演を成立させました。
従来の演歌・歌謡曲ファンと、ボカロやストリーミングネイティブの若年層を同じ番組内で共存させる試みは、紅白歌合戦という国民的フォーマットが次代へ適応するための明確なロードマップを提示したと言えます。
【紅白歌合戦出演者 2021】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2021年紅白歌合戦の見逃し配信やアーカイブは現在も視聴できますか?
A1:NHKオンデマンドやNHKプラスでの公式見逃し配信は、通常放送翌日から約1〜2週間の期間限定で提供されるため、現在は正規アーカイブ配信を視聴することはできません。再放送の予定も原則として組まれていません。
Q2:藤井風のサプライズ演出はどのような内容でしたか?
A2:前半の紹介時には「岡山の実家から中継」という設定で部屋着姿で「きらり」を歌唱しましたが、後半に突入すると東京国際フォーラムのメインステージに突如現れ、「燃えよ」をピアノ生演奏で披露。さらにMISIAのステージにも伴奏で参加するという多重のサプライズが展開されました。
Q3:まふまふが歌った「命に嫌われている。」が選曲された理由は?
A3:生きることへの葛藤と命の尊さを歌った同曲は、YouTube等の動画再生回数で1億回以上を記録するなど若年層を中心に絶大な共感を呼んでおり、コロナ禍で閉塞感の漂っていた2021年の社会情勢において強いメッセージ性を持つ楽曲として選定されました。
第72回NHK紅白歌合戦は、番組の基本骨格である「赤と白の対決」を保ちつつも、司会の統合やジャンルのボーダーレス化など、時代の要請に応じた大胆な変革を遂げた回でした。初出場組が放った強烈な個性と、細川たかしや石川さゆりといった重鎮が支える伝統の重みが拮抗し、日本のエンターテインメント史において極めて意義深い一夜となりました。