スタジオジブリの記念すべき初制作長編アニメーション映画として、時代を超えて世界中のファンを魅了し続ける名作『天空の城ラピュタ』。宮崎駿監督が描いた圧倒的な冒険活劇は、テレビ放送されるたびに「バルス」の合言葉とともにSNSのトレンドを席巻するなど、今なおその熱量は衰えることを知りません。
鉱山町で懸命に生きる少年パズーと、青い光を放つ飛行石を持つ少女シータの出逢いから始まる物語には、細部まで練り込まれた重厚な世界観や、名優たちが息を吹き込んだ個性豊かなキャラクターたちの魅力が凝縮されています。本稿では、主要キャストの一覧をはじめ、空中海賊ドーラ一家に隠された知られざる裏設定、そして多くの観客が気になっている「崩壊し浮上したラピュタ城のその後の行方」について、公式記録や制作陣の証言をもとに解説します。
【公開情報と制作背景】スタジオジブリ初制作作品としての歴史的意義

映画『天空の城ラピュタ』は、1986年8月2日に劇場公開されました。配給は東映で、上映時間は約124分。宮崎駿監督にとっては『ルパン三世 カリオストロの城』『風の谷のナウシカ』に続く長編アニメーション映画第3作にあたります。
特筆すべきは、本作がスタジオジブリ設立後に初めて制作された記念碑的作品である点です。『風の谷のナウシカ』の成功を受けて設立されたスタジオジブリにおいて、プロデューサーの高畑勲氏とともに万全の体制で臨んだ本作は、純粋なエンターテインメント性と少年の冒険心を前面に押し出した王道活劇として完成しました。音楽を担当した久石譲氏の荘厳な劇伴と、井上あずみ氏が歌う主題歌「君をのせて」は、日本アニメーション史に残る名曲として現在も広く歌い継がれています。
【主要キャスト一覧】パズーやシータに命を吹き込んだ豪華声優陣
本作の魅力を語る上で欠かせないのが、実力派声優陣による名演です。主人公パズーを演じた田中真弓氏のエネルギッシュな少年声や、ヒロイン・シータ役の横沢啓子(現・よこざわけい子)氏の凛とした可憐な声は、40年近く経過した今も色褪せません。
| キャラクター名 | 声優名 | キャラクターの役割・特徴 |
|---|---|---|
| パズー | 田中真弓 | スラッグ渓谷の鉱山で働く見習い機械工の少年。亡き父が目撃した「ラピュタ」の存在を信じ、シータを守るために奔走する。 |
| シータ(リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ) | 横沢啓子 | ゴンドアの谷出身の少女で、ラピュタ王家の正統な継承者。先祖から受け継いだ秘宝「飛行石」を持つ。 |
| ムスカ(ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ) | 寺田農 | 政府の特務機関を率いる冷酷な諜報員。表向きは政府の命に従うが、自らもラピュタ王家の末裔であり、王国の復活と世界支配を目論む。 |
| ドーラ | 初井言榮 | 空中海賊「ドーラ一家」の女首領。50代の肝っ玉母貴で、抜群の行動力と暗号解読の才を持つ。 |
| ポムじいさん | 常田富士男 | 廃鉱の地下深くで岩石を愛でる老人。飛行石の結晶の性質や、石が放つ光の意味をパズーたちに教える。 |
| 将軍(モウロ将軍) | 永井一郎 | ラピュタ探索部隊の軍指揮官。巨大飛行戦艦ゴリアテを指揮し、軍事力でラピュタの富を独占しようとする。 |
| シャルル | 神山卓三 | ドーラの長男(30歳)。豊かな口ひげを持つ大男で、親方ダッフィーと豪快な力比べを繰り広げた。 |
| ルイ | 安原義人 | ドーラの次男(25歳)。ちょび髭が特徴で、シータに一目惚れして厨房へプディング目当てに顔を出す。 |
| アンリ | 亀山助清 | ドーラの三男(20歳)。ベレー帽をかぶったそばかす顔の青年。兄弟たちとともに母親に頭が上がらない。 |
| ダッフィー(親方) | 糸博 | スラッグ渓谷の炭鉱夫の親方で、パズーの面倒を見ている頼れる人物。海賊相手に素手で立ち向かう。 |
| おかみさん | 鷲尾真知子 | ダッフィーの妻(設定では20歳、15歳頃に結婚)。肝の据わった性格で、町の大乱闘をフライパン片手に見守る。 |
| マッジ | TARAKO | ダッフィー夫妻の幼い娘。パズーの家に遊びに行くなど親しくしている。 |
加えて、冷酷無比な悪役ムスカを演じた名優・寺田農氏の知性的かつ狂気を孕んだ演技は、数々の印象的なセリフとともに今なお語り草となっています。また、パズーが働く鉱山の親方の娘マッジ役を、後に『ちびまる子ちゃん』のまる子役で国民的人気を博すTARAKO氏が演じていた点も注目すべきキャスティングです。
【ドーラ一家の裏設定】「人は殺さない」義賊集団の知られざる生態
物語の前半では恐ろしい海賊として登場しながら、後半ではパズーとシータにとって無二の頼もしい味方となる「ドーラ一家」。彼らの描写には、公式設定資料や小説版で明かされた数々の魅力的な裏設定が存在します。
まず注目すべきは、「一家は絶対に人を殺さない」という鉄の掟です。ドーラ一家が使用するグレネードランチャーの弾薬は、目つぶし用の催涙弾(マスタード榴弾)が主であり、標的も裕福な富裕層が乗る豪華客船などに限定されています。小説版の記述によると、ドーラ一家はアジトの近隣で子どもが生まれたと聞けば半年分の石炭を出産祝いに贈るなど義理人情に厚く、地元民からの評判は非常に良好です。そのため軍の捜索隊が迫った際も、村人たちが軍よりも早くドーラ一家に通報するため、国中に張り巡らされたネットワークも相まって一度も捕まったことがありません。
また、首領のドーラは単なる粗暴な海賊ではなく、ムスカに匹敵する知性の持ち主でもあります。劇中では「ANGO」と書かれた暗号書片手に軍の無線暗号を即座に解読してみせたほか、そろばんを「東洋の計算機」と呼んで自在に操り、自ら高度な航法計算を行っています。
母船である飛行戦艦「タイガーモス号」の内部では、シータの家庭的な一面にメロメロになった息子たちや子分たちが厨房をこぞって覗きにくるなど、アイドル的存在として歓迎されました。ちなみに、厨房へ覗きに来たメンバーは長男シャルル、次男ルイ、そして子分のク、ケ、コの計5人という細かい演出も劇中で描かれています。
【ラストシーンのその後】浮上したラピュタ城とキツネリスの行方
物語のクライマックス、パズーとシータが唱えた滅びの言葉「バルス」によって、ラピュタ下部の巨大な軍事要塞や殺人兵器のブロックは音を立てて崩壊し、海へと崩落していきました。しかし、城の中枢を守っていた巨大な飛行石と、千年以上もの時間をかけて根を張った巨大樹の生命力によって、上部の居住区と緑豊かな空中庭園は崩壊を免れ、静かに空高く浮上していきます。
このラストシーンに関して、テレビ放映当時に子どもたちから「大気のない宇宙空間まで上がってしまったら、残されたキツネリスや鳥たち、ロボット兵はどうなってしまうのか?」という心配の声が寄せられたことがあります。
この疑問に対し、制作陣や公式資料では「ラピュタは宇宙空間まで到達したのではなく、大気が十分に存在する成層圏などの高度で飛び続けている」と説明されています。実際に映画のエンディングクレジットの映像を注意深く見ると、城の背景には地上にある街並みや地表の明かりが昼夜を通して見えており、地球の大気圏内をゆっくりと周回していることが描写されています。争いの元凶であった軍事ブロックをすべて切り離し、純粋な自然と一体化したラピュタ城は、人間たちの欲望の手が届かない静かな高空で、永遠の安息を得て飛び続けているのです。
【天空の城ラピュタ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:シータとムスカのフルネームと、2人の関係性は何ですか?
A1:シータの本名は「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」、ムスカの本名は「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」です。ラピュタ語で「ウル」は王、「トエル」は真を意味します。かつて地上に降りたラピュタ王家は2つの家系に分かれており、シータは正統な本家の末裔、ムスカは分家の末裔という関係にあたります。
Q2:シータが唱えた「バルス」以外の呪文にはどのような意味がありますか?
A2:劇中でシータがおばあさんから教わった「リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」という呪文は、ラピュタ語で「我を助けよ、光よ甦れ」という意味を持っています。この言葉によって封印されていた飛行石が覚醒し、ラピュタ城を指し示す聖なる光を放ちました。
Q3:パズーとシータは物語の結末の後、どうなったのですか?
A3:ドーラ一家の小型グライダー(フラップター)で脱出したパズーとシータは、平穏な地表へと戻った後、それぞれの生活へと帰っていきます。シータは故郷であるゴンドアの谷へ戻り、パズーはスラッグ渓谷で再び技師としての腕を磨きながら、将来シータに会いに行くという後日談が語られています。
『天空の城ラピュタ』が公開から40年近くを経た現在も愛され続ける最大の理由は、圧倒的なスペクタクルと緻密な人間ドラマの完璧な融合にあります。空への憧れ、機械へのロマン、自然と科学技術の共生という普遍的なテーマを、少年少女の成長物語を通じて描き切った宮崎駿監督の手腕は唯一無二です。
迫力あるアクションシーンだけでなく、ドーラ一家が見せる人間味や、滅びの先にある静けさを描いたラストシーンの意味を知ることで、作品をより深く味わうことができます。次に本作を鑑賞する際は、ぜひキャラクターたちの細やかな仕草や背景に込められた設定に注目してみてください。